
ワンウェイクラッチ(One-Way Clutch)は、回転方向を一方向のみに制限する機構です。
ある方向には自由に回転し、反対方向にはロックしてトルクを伝達するため、「逆転防止機構」や「バックストップ」とも呼ばれます。
コンベヤや減速機、巻取り装置など、逆転を防ぎたい機械要素に広く使用されます。
ワンウェイクラッチとは(基礎知識)
ワンウェイクラッチは、入力軸と出力軸の間で回転方向を制御する装置で、片方向の回転のみを許容し、逆方向の回転を瞬時にロックします。
ローラやスプリング、カムなどの構造により、摩擦を利用してトルクを伝達します。主に次のような用途で使われます。
- コンベヤやエレベータなどの逆転防止
- 巻取り・送り装置の空転制御
- クラッチ機構(自転車の後輪ハブなど)
- モータや減速機の回転保持
ワンウェイクラッチの種類
- ローラ式:最も一般的な構造。ケージ内のローラが傾くことでロック・解除を行う。高トルク・小スペース。
- スプラグ式:カム形状のスプラグが内外輪間でトルクを伝達。高速・高耐久用途に適する。
- カム式:カムとばねで一方向に噛み込み。低速・中トルク向け。
- ラチェット式:爪と歯車が噛み合う構造。動作が分かりやすく、安価だが騒音が大きい。
- バックストップ式:減速機の出力軸などで逆転を防止。保持機構付きで安全性が高い。
主な用途
- ベルト・チェーンコンベヤの逆走防止
- 巻取り・送り機構の一方向送り
- 自転車ハブ・リール・モータドライブの空転機構
- 減速機・昇降機の安全保持(バックストップ)
- クラッチユニット内部の一方向伝達機構
構造と作動原理
ワンウェイクラッチは、内輪と外輪の間に設けられた「ローラ」や「スプラグ」が、回転方向によって接触・分離することで動作します。
- 正転時:内輪・外輪が滑らかに回転し、摩擦が発生しない(空転状態)。
- 逆転時:ローラ(またはスプラグ)が傾斜面に押し付けられて噛み込み、トルクを伝達してロック。
構造的に非常にコンパクトで、ベアリング一体型やユニット型も多く、市販部品として容易に入手できます。
選定時のポイント
- 定格トルク:駆動軸にかかる最大トルクより20〜30%余裕を持たせます。
- 回転数:スプラグ式は高速対応、ラチェット式は低速・高負荷向け。
- 取付方法:内輪固定型・外輪固定型・シャフト直結型を用途に合わせて選定。
- 潤滑:オイル潤滑またはグリース封入型。ドライ環境では摩耗対策が必要。
- 環境条件:粉塵・湿気が多い環境では密封構造やステンレス仕様を選ぶ。
主なメーカー一覧
- 椿本チエイン株式会社(TSUBAKI):スプラグ式ワンウェイクラッチ、バックストップなど。世界的シェアを持つ。
公式サイトはこちら - 日本トムソン株式会社(IKO):ニードルローラクラッチを展開。精密・高信頼性設計。
公式サイトはこちら - NSKマイクロプレシジョン株式会社(NSK Micro):小型・薄型のローラクラッチを展開。OA機器・精密装置向け。
公式サイトはこちら - オリエンタルモーター株式会社:モータ・減速機用の逆転防止クラッチ付きモデルを展開。
公式サイトはこちら - 株式会社不二越(NACHI):ベアリング一体型ローラクラッチを製造。高耐久・高トルクに対応。
公式サイトはこちら - NTN株式会社:ベアリング内蔵クラッチユニットやバックストップを提供。重機械に採用多数。
公式サイトはこちら - 三木プーリ株式会社(MIKI PULLEY):クラッチユニット一体型ワンウェイ機構を提供。
公式サイトはこちら
メーカー比較表
メーカー | 主力タイプ | 強み | 用途例 |
---|---|---|---|
TSUBAKI | スプラグ・バックストップ | 重負荷対応・信頼性 | コンベヤ・昇降装置 |
IKO | ニードルローラ | 精密・コンパクト | 産業機器・搬送 |
NSK Micro | 小型ローラ式 | 軽量・静音 | OA機器・精密装置 |
NACHI | ローラ式一体型 | 高トルク・高耐久 | 減速機・巻取り装置 |
NTN | ベアリング一体型 | 大型・高トルク用途 | 重機械・プラント |
オリエンタルモーター | モータ一体型 | 組込み・省スペース | FA・搬送ライン |
三木プーリ | クラッチ統合型 | 駆動制御連携 | FA・自動機 |
購入先・販売サイト
Q&A(よくある質問)
Q. ワンウェイクラッチとバックストップの違いは?
A. 機能は同じく「逆転防止」ですが、バックストップは特に重力負荷がかかる垂直搬送装置など、安全保持を目的とした構造です。
Q. ワンウェイクラッチのメンテナンス周期は?
A. グリース封入型であれば10,000〜20,000時間程度で交換が目安。高負荷用途では定期的なトルクチェックが推奨されます。
Q. 回転方向を反転したい場合はどうすればいい?
A. 取り付け方向を逆にする、または両方向対応の「双方向クラッチユニット」を選定します。