
磁力駆動ポンプ(マグネットポンプ)は、モーターの回転を磁力で伝達して液体を送る「シールレス構造」のポンプです。
シャフトシール(パッキンやメカニカルシール)が不要なため、液漏れが起きにくく、薬品や純水などのクリーン液体の移送に広く利用されています。
この記事では、マグネットポンプの構造・種類・用途・代表メーカーをわかりやすく解説します。
磁力駆動ポンプとは?(基礎知識)
磁力駆動ポンプ(マグネットポンプ)は、モーターの回転を磁力で非接触伝達することで、液体を送る遠心ポンプ型のシールレスポンプです。
駆動軸が外部に露出しないため、構造上液漏れの心配がほとんどありません。
そのため、薬液・純水・有機溶剤・腐食性液体などの移送に最適です。
構造と仕組み
マグネットポンプの主な構成要素は以下の通りです。
- 外部マグネット:モーター軸に直結し、回転磁界を発生。
- 内部マグネット:インペラ(羽根車)に取り付けられ、外部マグネットの磁力で同期回転。
- ケーシング(ハウジング):液体を密閉し、磁力を透過する樹脂・金属材料で構成。
- インペラ:遠心力で液体を押し出す羽根車部。
- 軸受:潤滑液体で支持されるベアリング。自己潤滑型が多い。
作動原理
モーター軸の外部マグネットが回転すると、その磁力が内部マグネットに伝わり、非接触でインペラが回転します。
液体はインペラの遠心力で吐出口へ押し出され、同時に吸込口から新たな液体が吸い込まれることで連続送液が行われます。
特徴
- 軸封部がないため液漏れがない(シールレス構造)。
- 薬品・腐食液・有機溶剤などに対応。
- モーター直結で構造がシンプル、保守が容易。
- 騒音・振動が少なく、省エネ設計が可能。
- 空運転・キャビテーションには注意が必要。
磁力駆動ポンプの種類
- 樹脂製マグネットポンプ:耐薬品性に優れ、化学薬品・メッキ液などの搬送に使用。
- 金属製マグネットポンプ:耐圧性・耐熱性に優れ、高温・高圧液体に適する。
- 小型マグネットポンプ:研究・ラボ用に使用。少流量・低騒音。
- 高流量タイプ:プラント・設備・冷却水ラインなど産業用途向け。
用途
- 化学薬品・酸・アルカリ液の移送
- メッキ液・洗浄液・純水・冷却水の循環
- 有機溶剤・腐食性液体の供給
- 半導体・電子部品製造ライン
- 医薬・食品・研究装置の送液システム
選定のポイント
- 流量・揚程・使用温度
- 液体の種類(腐食性・粘度・比重)
- 材質選定(樹脂/金属・軸受材など)
- モーター出力・回転数
- 空運転防止・ドライラン保護の有無
主なメーカーと特徴
株式会社イワキ
マグネットポンプの国内トップメーカー。樹脂製から金属製まで豊富なラインアップを持つ。
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タクミナ株式会社
薬液移送・定量ポンプ分野に強み。耐薬品・省エネ設計に優れたマグネットポンプを展開。
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日機装株式会社(NIKKISO)
産業用金属製マグネットポンプの大手。高温・高圧液やクリーン環境に対応。
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三相電機株式会社
小型樹脂製ポンプの老舗メーカー。冷却水や薬液循環用で定番。
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メーカー比較表
メーカー | 主力製品 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|---|
イワキ | 樹脂製マグネットポンプ | 耐薬品性・多用途 | 化学・研究・設備 |
タクミナ | 薬液用マグネットポンプ | 省エネ・高精度制御 | 製薬・水処理 |
日機装 | 金属製マグネットポンプ | 高圧・高温対応 | 化学プラント・半導体 |
三相電機 | 小型樹脂ポンプ | コンパクト・低騒音 | 冷却水・一般設備 |
購入先・通販サイト
Q&A
Q. マグネットポンプと通常の遠心ポンプの違いは?
A. 通常の遠心ポンプはシャフトシールが必要ですが、マグネットポンプは磁力で非接触駆動するためシールが不要で液漏れがありません。
Q. 空運転は可能ですか?
A. 不可です。内部軸受が液体で潤滑されるため、空運転すると焼損や破損の原因になります。
Q. 腐食性の強い酸液にも使えますか?
A. 樹脂製(PFA、PVDFなど)のモデルを選べば、塩酸・硫酸・苛性ソーダなどにも対応可能です。
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