
労働災害の多くは、実際に事故が起こる前に「ヒヤリとした」「ハッとした」という小さな危険兆候が存在します。
これを放置せず改善につなげるのがヒヤリハット報告とKYT(危険予知トレーニング)です。
本記事では、これら活動の目的・進め方・記録方法・効果をわかりやすく紹介します。
ヒヤリハットとは
ヒヤリハットとは、「事故には至らなかったが、ヒヤリとした・ハッとした体験」を指します。
労働安全衛生の分野では、1件の重大災害の背景には約300件のヒヤリハットがあるとされる「ハインリッヒの法則」が知られています。
目的
- 事故発生の前兆を早期に把握し、対策を講じる
- 現場の安全意識を高め、報告文化を育てる
- 作業環境・手順の改善に活用する
KYT(危険予知トレーニング)とは
KYTは「Kiken Yochi Training(危険予知トレーニング)」の略で、作業前に潜在的な危険を洗い出し、安全行動を共有する活動です。
目的
- 作業前に危険要因を認識・共有する
- チーム全体で安全意識を高める
- ヒューマンエラーの発生を防ぐ
KYT活動の4ラウンド法(中災防方式)
ラウンド | 内容 | 具体例 |
---|---|---|
第1ラウンド | 現場・作業をイラストや写真で見る | 作業現場の状況を全員で確認 |
第2ラウンド | 潜む危険を洗い出す | 転倒・挟まれ・落下などを列挙 |
第3ラウンド | 主な危険を絞り込み、対策を立てる | 足元整理・合図確認・手袋着用など |
第4ラウンド | 指差呼称で行動目標を確認 | 「ヨシ!」と声を出して確認 |
ヒヤリハット報告の進め方
- 報告様式を統一: 「発生場所・状況・原因・対策」を簡潔に記入できるフォーマットを用意
- 報告しやすい雰囲気づくり: 責任追及ではなく共有・改善目的で運用
- 分析と再発防止: 類似事例を抽出し、改善策をマニュアルへ反映
- 表彰・共有: 優良報告を全体で称賛し、参加意識を向上
活動ツールと教材例
- KYTシート: 作業ごとの危険要因を書き出し、チームで共有
- ヒヤリハット報告書: 記入しやすいテンプレート形式で定期回収
- 安全教育DVD・イラスト教材: 事故事例を視覚的に学習
- デジタルKYTアプリ: タブレット・クラウドで記録を共有
主要ツール提供企業
中央労働災害防止協会(中災防)
KYTトレーニング教材やヒヤリハット集など、全国の事業所で活用される教材を提供。
サイボウズ株式会社
クラウド型「報告・共有アプリ」を提供。現場でのヒヤリハット報告に最適。
Safety Meister(セーフティマイスター)
オンラインでKYT・ヒヤリハット管理が可能なeラーニングプラットフォーム。
ヒューマンテクノシステム
VR体験による危険予知教育を展開。体感的にリスクを理解させるシステム。
日本能率協会(JMA)
安全大会や管理者向けのKYT研修を実施。
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Q&A
Q. KYTは毎日行う必要がありますか?
A. 原則として、作業前の朝礼・班ミーティング時に毎日実施するのが理想です。
Q. ヒヤリハット報告がなかなか集まりません。
A. 責任追及の雰囲気があると報告が減ります。匿名報告制度や表彰制度を導入すると促進されます。
Q. 小規模事業所でもKYTは必要ですか?
A. はい。少人数でも、危険を共有することで事故防止に大きな効果があります。