設備点検は「やりっぱなし」では意味がありません。
点検で得た情報を分析し、改善につなげることで、はじめて“生きた保全活動”になります。
本記事では、設備点検をPDCAサイクルで運用する考え方と、改善を継続させる具体的な手順を解説します。
1. 設備点検におけるPDCAとは?
PDCAとは、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(確認)→ Act(改善)のサイクルを回して、保全活動の精度を高める考え方です。
点検計画・実施・評価・改善を繰り返すことで、設備の安定稼働と保全コスト削減を両立できます。
PDCAの目的
- 点検活動を属人的な判断から仕組み化へ
- 点検データを蓄積し、再発防止・改善に活かす
- “やりっぱなし”点検を防ぎ、品質を一定化する
2. 設備点検のPDCAサイクルの流れ
① Plan(計画)
点検の目的・頻度・項目・基準を明確にし、年間スケジュールを作成します。
- 点検目的:安全確保/故障防止/性能維持
- 対象設備:重要設備を優先(停止時損失が大きい機器)
- 点検基準:メーカー基準+自社実績による判定値設定
点検チェックリストを活用して、基準を明文化することが重要です。
② Do(実行)
点検計画に基づき、現場で点検・測定を実施します。
スマホやタブレットを活用すれば、データ入力・写真添付をリアルタイムで行えます。
- 点検結果の記録(OK/NG/要確認)
- 異常時の一次対応・応急処置
- 報告書やクラウドへの即時入力
点検・報告クラウドツールの導入で、情報共有が容易になります。
③ Check(確認)
点検結果を集計し、傾向・異常率・作業時間などを評価します。
この段階での“分析”が、改善の起点となります。
- 不具合発生頻度の分析(Pareto分析)
- 点検実施率・漏れの確認
- 設備ごとの劣化傾向の把握
④ Act(改善)
分析結果をもとに、点検内容・周期・基準を見直します。
特に、再発するトラブルや頻発設備には重点的な対策を講じます。
- 点検周期の見直し(短縮/延長)
- 点検手順・教育内容の更新
- 異常データをCMMSへ反映し、保全計画を自動修正
3. PDCAを定着させるための仕組み
- 定期的な点検会議・レビューの実施
- 記録データの可視化(グラフ・ダッシュボード)
- 改善事例の共有・教育
- 点検報告と連動したアラート通知設定
4. IoT・クラウド活用によるPDCAの高度化
IoT・クラウドを活用すれば、点検サイクルをリアルタイムで回せます。
設備状態監視クラウドとデータロガーを組み合わせることで、「Check」の精度が飛躍的に向上します。
- 異常兆候を自動検知し、「Do→Check」を自動化
- AI異常検知により、改善ポイントをAIが提案
- 改善効果をCMMSで可視化・報告
5. 改善活動の実践例
| 課題 | 対策 | 成果 |
|---|---|---|
| ポンプのベアリング焼損が頻発 | 振動データを分析し、早期交換基準を設定 | 停止トラブルを90%削減 |
| 点検漏れが多発 | スマホ入力・自動リマインド機能を導入 | 点検実施率が98%へ向上 |
| 報告書作成に時間がかかる | クラウド自動レポート機能を導入 | 記録時間が1/3に短縮 |
まとめ
PDCAによる点検改善サイクルは、保全を「継続的に強くする」ための基本です。
データと仕組みを活用してサイクルを回し続けることで、「止まらない・ムダのない・学ぶ工場」を実現できます。
まずは主要設備1台から、PDCAの小さな成功体験を積み重ねましょう。







