
工場で使用される圧縮空気は、生産コストの中でも大きなエネルギー消費項目です。
配管や継手からのわずかな空気漏れが、年間で数十万円単位の損失につながることもあります。
空圧漏れ検出器(リークディテクタ)は、こうした目に見えない漏れを“音”で検出する診断ツールです。
空圧漏れ検出器とは?
空圧漏れ検出器は、圧縮空気が漏れる際に発生する超音波(20kHz〜40kHz)を検出し、音圧レベルとして表示・警告する装置です。
人の耳では聞こえない高周波音を検出するため、稼働中の設備でも安全かつ正確に測定できます。
- 漏れ箇所の特定が容易
- 停止不要で稼働中に点検可能
- 電気式・空圧式機器のあらゆる配管に対応
診断の基本原理
空気が高圧から低圧へ漏れる際に、摩擦で発生する「乱流音」を超音波センサで検出します。
検出強度が大きいほど、漏れの量も多いと判断できます。
診断対象 | 発生音の特徴 | 主な原因 |
---|---|---|
配管ジョイント部 | 断続的な超音波ノイズ | シール劣化・締付不良 |
バルブ・レギュレータ | 継続的な高音波 | 弁座摩耗・内部漏れ |
エアホース・継手 | 点状のピーク音 | ピンホール破損 |
測定の手順
- 設備稼働状態で超音波検出器を起動
- 配管・継手・バルブを順にスキャン
- 漏れ音を検知した箇所で感度を調整し、最大値を記録
- 漏れ箇所をマーキングし、補修対象として記録
静音環境ではマイク型、騒音環境では指向性センサ(パラボラ型)が効果的です。
定量的な評価方法
音圧レベル(dBμV) | 漏れレベル目安 | 対応 |
---|---|---|
30〜50 | 微小漏れ | 次回点検時に確認 |
50〜70 | 中程度漏れ | 早期補修を推奨 |
70以上 | 重大漏れ | 即時対応(運転ロス発生) |
活用シーン
- コンプレッサ配管・分岐ラインの定期点検
- 自動機・搬送装置のシリンダ系統チェック
- 夜間や停止中の静音時診断
- エネルギー監査・省エネ活動の一環
代表的なメーカーと特徴
メーカー | 特徴 |
---|---|
キーエンス(KEYENCE) | 可視化ディスプレイ付きモデル。距離表示機能搭載。 |
シントー(SHINTO) | 国内向け高感度超音波リークディテクタを展開。 |
FLIR(フリアー) | 音響イメージングカメラで漏れ箇所を画像化。 |
UE Systems | 世界的に定評ある超音波検査器メーカー。 |
日置電機(HIOKI) | 電気設備の絶縁診断と併用可能な総合モデル。 |
運用と記録のポイント
- 漏れ箇所を写真・動画で記録し、位置を明確化
- 漏れレベルを定量値で記録し、前回比で改善効果を確認
- 補修後の再測定で修復効果をデータ化
- 年度ごとの漏れ量削減率をKPI化
まとめ
空圧漏れ検出器は、設備の稼働効率とエネルギーコストを改善する最も費用対効果の高い診断ツールです。
音響イメージングなどの新技術を活用すれば、現場作業の効率化と省エネ管理の“見える化”を同時に実現できます。