
クランプメータ(電流計)とテスター(マルチメータ)は、電気設備の状態診断に欠かせない基本ツールです。
特にクランプメータは、稼働中の電流値を非接触で測定できるため、モータや制御盤の異常兆候を安全かつ迅速に確認できます。
クランプメータとは?(基礎知識)
クランプメータは、電線をクランプ部(輪状コア)で挟むだけで電流を測定できる装置です。
磁界変化から電流を検出するため、配線を切らずに測定可能という大きなメリットがあります。
- 非接触測定で安全性が高い
- 稼働中の設備でも測定可能
- AC/DC電流・電圧・漏れ電流を多機能で確認できるモデルも多い
クランプメータとテスターの違い
項目 | クランプメータ | テスター(マルチメータ) |
---|---|---|
主な測定対象 | 電流(AC/DC) | 電圧・抵抗・導通・電流 |
測定方式 | クランプコアによる非接触 | リード接続による接触測定 |
用途 | 稼働中の負荷電流・漏電測定 | 回路の接続確認・電源電圧チェック |
安全性 | 通電状態で測定可 | 停電・切替作業が必要な場合あり |
電気設備診断での活用例
- モータ負荷電流の確認:定格電流との差を把握し、過負荷・相不平衡を特定
- 漏電・リーク電流検出:絶縁低下の早期兆候を確認(絶縁監視リレーとの併用)
- 制御盤回路のトラブルシュート:ブレーカ・接触器の不良や配線異常を短時間で判別
- 保全作業の電力データ取得:定期測定による省エネ・傾向管理
選定時のポイント
- 測定レンジ:600A以上対応モデルが望ましい(工場設備用)
- 真の実効値(True RMS)対応:インバータ波形を正確に測定可能
- 漏れ電流レンジ:1mA単位の高感度対応機があると便利
- 安全規格:CATⅢ(600V)以上を推奨
- データ保持:Bluetooth/メモリ記録機能付きモデルも選択肢
代表的なメーカーと特徴
メーカー | 主な特長 |
---|---|
日置電機(HIOKI) | 精度と安全性に優れた業務用。漏れ電流・DC対応モデルが充実。 |
共立電気計器(KYORITSU) | コストパフォーマンス重視。現場用スタンダード。 |
三和電気計器(SANWA) | 教育機関・軽作業用として人気。デジタルテスターも豊富。 |
FLUKE(フルーク) | 世界的ブランド。True RMS対応で高信頼性。 |
横河電機(YOKOGAWA) | 電力解析用クランプもラインアップ。工場常設モニタリングに強い。 |
測定・診断の実務ポイント
- 測定前にクランプ位置(相・方向)を確認
- モータ負荷時の電流を記録し、定格電流との乖離を確認
- 相電流のバランスをチェック(3相の差が10%以上で異常)
- 漏れ電流測定では、3相をまとめてクランプ(零相電流測定)
よくあるトラブルと対策
トラブル | 原因 | 対策 |
---|---|---|
値が不安定 | 導体位置のズレ・他線干渉 | 導体をコア中央に固定して再測定 |
異常電流が検出できない | 波形歪みやDC成分を含む | True RMS対応モデルを使用 |
漏電測定時に誤報 | 周辺機器のノイズ混入 | ノイズフィルタ搭載タイプを使用 |
安全管理のポイント
- 測定中の導体には触れない(感電防止)
- CAT規格を守る:600V盤→CATⅢ以上、変電盤→CATⅣ推奨
- アース系統・盤内金属部との距離を確保
まとめ
クランプメータやテスターは、点検だけでなく「設備の健康度を数値で把握する最前線ツール」です。
絶縁監視装置やインバータ診断と組み合わせることで、電気系統のトラブル原因を迅速に特定し、計画的なメンテナンスへとつなげることができます。