工場の設備診断は、自社で実施できる範囲と、専門業者に依頼した方が効率的な範囲があります。
本記事では、外部の診断サービスを上手に活用する方法と、委託時のポイント・注意点を解説します。
1. 設備診断の外部委託とは?
設備診断の外部委託とは、モータ・ポンプ・コンプレッサ・配管などの診断・測定・分析を、専門知識・機器を持つ業者に依頼することを指します。
特に高精度の測定や、内部構造に関わる診断は、外部委託のほうが効率的です。
委託が検討される主なケース
- 社内に診断機器・専門人材が不足している場合
- 高圧・高温など特殊設備の測定が必要な場合
- 停止時間を短縮したい場合(オンライン診断)
- メーカー保証や第三者評価が必要な場合
2. 外部診断を活用するメリット
- 専門機器による高精度な診断:FFTアナライザや油分析装置など、高価な機器を保有している。
- 中立的な評価:メーカーや社内の立場にとらわれない客観的診断。
- 省人化・効率化:現場の人手不足を補える。
- 改善提案付きの報告書:診断データに基づいた再発防止策を提示。
3. 外部診断サービスの種類
| サービス内容 | 主な対象設備 | 概要 |
|---|---|---|
| 振動診断サービス | モータ・ポンプ・ファン | 振動データ測定とFFT解析で異常を特定。 |
| 電流解析(MCSA) | モータ・インバータ | 電流波形から内部損傷を推定。 |
| 赤外線サーモ診断 | 電気盤・配管・軸受 | 温度分布を画像化し、異常発熱を可視化。 |
| 油・グリス分析 | 油圧装置・ギアボックス | 油中金属粉や水分量を分析し、摩耗状態を評価。 |
| 空圧・真空リーク診断 | 空気配管・真空ライン | 超音波センサで漏れ箇所を特定。 |
4. 外部委託先の選び方
委託業者を選定する際は、価格だけでなく「技術力」「実績」「対応範囲」を総合的に判断することが大切です。
チェックポイント
- 対象設備・業種での診断実績があるか
- 報告書サンプルを事前に確認できるか
- データ形式(CSV・PDFなど)が自社運用と合うか
- 緊急対応・定期契約に対応しているか
- 保全計画や改善提案まで対応できるか
代表的な診断事業者(例)
- 日立プラントサービス(総合診断)
- 三菱電機エンジニアリング(モータ・制御系)
- 荏原冷熱システム(ポンプ・ファン系)
- 住友重機械エンジニアリングサービス(回転機)
- 中小設備診断専門会社(地域密着型)
5. 費用の目安
| 診断内容 | 概算費用(目安) |
|---|---|
| 振動診断(1台) | 20,000〜50,000円 |
| サーモグラフィ診断(1ライン) | 30,000〜80,000円 |
| 油分析(1サンプル) | 10,000〜25,000円 |
| リーク診断(1現場) | 30,000〜100,000円 |
定期契約や複数設備をまとめることで、単価を下げられる場合もあります。
6. 委託時の注意点
- 診断目的と範囲を明確にする(例:モータ振動の異常検知まで)
- 作業日程・設備停止の有無を事前確認
- 報告書納期とフォーマットを取り決める
- データの所有権・再利用条件を契約で明記
7. 自社との役割分担
最も効率的なのは、「日常点検は自社」「精密診断は外部」の併用です。
| 実施者 | 主な内容 |
|---|---|
| 自社(保全担当) | 日常点検、温度・音・振動の簡易チェック |
| 外部業者 | 詳細測定、FFT解析、油分析、AI診断 |
8. 外部データの活用
外部診断で得たデータは、CMMSやクラウド管理ツールに取り込むことで、社内保全データと一元管理できます。
これにより、保全計画の最適化・異常傾向の早期発見が可能です。
まとめ
外部の診断サービスを上手に活用すれば、精度・スピード・効率のすべてを高められます。
重要なのは、「自社でできる範囲」と「外部に任せる範囲」を明確に分けることです。
診断結果をデジタル化・共有し、外部パートナーと連携することで、“止まらない・見える・改善し続ける工場”を実現できます。







