
油圧システムは、工作機械やプレス機、射出成形機など、多くの設備で動力伝達に使われています。
その状態を把握するうえで欠かせないのが油圧テスタ(油圧測定器)です。
本記事では、圧力・流量・温度の測定によって油圧異常を見抜く方法を紹介します。
油圧テスタとは?(基礎知識)
油圧テスタは、油圧配管ラインの圧力・流量・温度を同時に測定し、ポンプやバルブ、シリンダの性能を診断する装置です。
主に以下の用途で使用されます。
- 油圧ポンプの吐出圧・流量の確認
- バルブ・アクチュエータの作動チェック
- システム圧損や流路詰まりの特定
- メンテナンス後の性能検証・試運転調整
油圧診断で測定すべき3つの基本要素
項目 | 意味 | 診断のポイント |
---|---|---|
圧力 | ポンプの出力能力を示す | 低下=ポンプ摩耗/弁漏れの可能性 |
流量 | 実際の吐出量・回路流速を示す | 低下=回路閉塞/ポンプ劣化 |
温度 | 油温の上昇は損失や劣化を反映 | 上昇=エネルギーロス・冷却不良 |
測定の流れ
- 測定位置を決定:ポンプ出口または回路途中にテスタを接続
- 負荷を与える:テスタの負荷弁を閉じ、任意の圧力で運転
- 圧力・流量を読み取り:定格値との比較で性能を評価
- 温度を記録:高温化や粘度低下を確認
代表的な診断パターン
現象 | 測定傾向 | 原因 |
---|---|---|
圧力低下・流量正常 | 圧力が上がらない | リリーフ弁開放・調整不良 |
圧力正常・流量低下 | 流量値が定格より少ない | ポンプ摩耗・吸込みエア混入 |
圧力・流量とも低下 | 全体的に性能が低下 | ポンプ摩耗・油漏れ・回路詰まり |
油温上昇 | 温度が急上昇 | 冷却不良・オーバーロード |
主なタイプ
- アナログ式:現場点検に適した手動計測タイプ
- デジタル式:圧力・流量・温度を一括表示、データ保存対応
- ポータブル型:クイックカプラ接続で多機種対応
- 常設型:油圧ユニット内で連続モニタリング
代表的なメーカーと特徴
メーカー | 特徴 |
---|---|
NACHI(不二越) | 現場試験用ポータブル油圧テスタを展開 |
アネスト岩田 | 産業設備向け圧力・流量モニタリング機器を提供 |
ユシロ化学工業 | 油圧油・作動油の診断ソリューションを併用 |
東京測器研究所(TOKYO SEIKI) | アナログ/デジタル両対応モデルをラインアップ |
安全管理と測定時の注意点
- 測定中は必ず防護具を着用(油飛散防止)
- 圧力上昇時に配管や継手の緩みを確認
- 油温が高い場合は冷却後に接続
- 高圧ラインへの急接続は厳禁
まとめ
油圧テスタは、ポンプや回路の「健康診断」を行うための基本ツールです。圧力・流量・温度のトレンドを定期的に記録することで、劣化傾向を早期に把握できます。
他の油圧センサや油劣化チェッカと組み合わせれば、設備全体の信頼性向上に直結します。