
モータや電気設備のトラブルは、突発停止や焼損など重大な生産停止リスクを伴います。
本記事では、電気・モータ系の診断に使われる主要ツールを体系的に整理し、設備劣化を“数値で見抜く”ための基本をまとめました。
電気診断の目的と重要性
電気設備・駆動機器の異常は、絶縁・電流・温度・波形の変化として現れます。
定期点検だけでなく、診断ツールを活用することで、異常の「前兆」を数値で把握し、予防保全・省エネ対策にもつなげられます。
- 電気事故や焼損を未然に防ぐ
- 絶縁劣化・漏電の早期発見
- モータ・インバータの性能低下を数値で管理
- エネルギーロスの可視化と改善
主な電気診断ツール一覧
カテゴリ | 主な目的 | 代表的な測定項目 | 詳解リンク |
---|---|---|---|
絶縁監視装置 | 常時絶縁監視・漏電検出 | 絶縁抵抗・漏電電流 | 絶縁監視リレー・漏電監視装置によるリアルタイム診断 |
クランプメータ/テスター | 稼働中の電流測定・漏れ電流検出 | AC/DC電流・電圧・抵抗 | クランプメータ・テスターの基礎と選び方 |
モータ電流解析(MCSA) | 非侵襲でモータの機械・電気的異常を検出 | 電流スペクトル・側帯域 | モータ電流解析(MCSA)による故障診断 |
インバータ診断 | DCリンク・スイッチング素子の劣化検出 | リプル・高調波・電流波形 | インバータ診断の基礎と異常波形の見方 |
サーボモータ診断器 | 位置・トルク・制御信号の異常解析 | トルクリップル・位置偏差 | サーボモータ診断器の基礎と使い方 |
一体モニタリング装置 | 温度・電流・振動の常時監視 | IoTセンサデータ・アラート履歴 | モータ・ポンプの軸受温度と振動の相関診断 |
電気系トラブルの典型パターンと診断アプローチ
症状 | 主な原因 | 有効な診断ツール |
---|---|---|
絶縁低下・漏電 | 湿気・経年・配線損傷 | 絶縁監視装置・漏電クランプメータ |
過負荷・発熱 | ベアリング固着・巻線劣化 | クランプメータ・MCSA・温度センサ |
波形異常 | インバータ素子劣化・制御ノイズ | インバータ診断ツール・電力解析装置 |
トルク変動・応答遅れ | サーボ制御異常・バックラッシ | サーボモータ診断器・MCSA |
振動+電流変動の同時発生 | 軸受劣化・芯ずれ | 複合モニタリング装置 |
運用の基本ステップ
- 設備ごとに測定点・診断項目を定義
- 定格値・基準データを記録(初期値)
- 周期点検(1〜3ヶ月単位)で比較
- 閾値を設定してアラート化(自動化)
- トレンド分析による予防保全の実践
電気診断を効率化する工夫
- 無線センサ・ロガーで常時データ取得
- 異常判定をRAG表示(緑・黄・赤)で可視化
- クラウド管理で設備単位の履歴を自動保存
- 報告書テンプレートに波形・温度・電流を添付
導入の優先順位(初期構築のヒント)
- まずはクランプメータで実電流を把握(基本の“見える化”)
- 次に絶縁監視で安全性を担保
- その後、MCSA+インバータ診断で異常検知精度を高める
- 最後にサーボ診断・一体監視装置で常時監視を実現
関連個別記事リンク(第2フェーズ)
- 絶縁監視リレー・漏電監視装置によるリアルタイム診断
- クランプメータ・テスターの基礎と選び方
- モータ電流解析(MCSA)による故障診断
- インバータ診断の基礎と異常波形の見方
- サーボモータ診断器の基礎と使い方
- モータ・ポンプの軸受温度と振動の相関診断