設備保全の目的は、「止まらない工場」をつくること。
そのためには、点検・診断・改善を繰り返す仕組みと、人とデータが連携するマネジメント体制が欠かせません。
本記事では、設備診断から予知保全までの流れと実践ポイントをまとめます。
1. 設備診断・保全管理の全体像
設備保全は、次の4ステップで体系化できます。
- 状態を把握する(点検・測定):振動・温度・電流などを測定して現状を可視化。
- 状態を分析する(診断):データを解析し、劣化や異常の兆候を見つける。
- 改善する(保全・修理・教育):原因を特定して対策を実行。
- 予測する(IoT・AI・予知保全):データとAIで未来の異常を先読み。
この流れを継続的に回すことが、安定稼働とコスト最適化の鍵になります。
2. 設備診断の考え方
点検や測定は“目的”をもって行うことが重要です。
設備診断の基礎知識で紹介したように、診断は「劣化を定量的に捉える技術」。
異常を早期に発見し、修理・更新の判断を科学的に行うための手段です。
3. 改善サイクルとPDCAの定着
設備点検のPDCAと改善サイクルで解説したように、点検は“やりっぱなし”にせず、データを分析して改善に結びつけることが大切です。
- Plan:点検項目・周期・基準を設定
- Do:点検・測定を実施
- Check:結果を分析・評価
- Act:改善・教育・周期見直し
これをクラウドやCMMSで自動化すれば、持続的な改善が可能になります。
4. リスク管理と安全確保
保全活動では安全が最優先です。
リスクアセスメントを実施し、危険源を洗い出してリスクを数値化・対策化することで、安全で効率的な点検・整備が実現します。
5. 情報管理と報告書の標準化
診断結果の報告書・管理帳票を整備することで、結果の比較・分析が容易になります。
報告内容をデータベース化し、改善・教育に活かすことが保全の成熟度を高めます。
6. 外部診断・専門サービスの活用
設備診断の委託・外部サービス活用も効果的です。
高精度の測定や専門的な解析を委託し、自社では日常点検と改善に集中することで、コスト・精度・スピードのバランスを最適化できます。
7. 人材教育とスキルアップ
最終的に、設備保全の質を決めるのは“人”です。設備診断士など資格・教育で紹介したように、体系的な教育・資格取得を進めることで、組織全体の保全レベルを底上げできます。
8. 予知保全へのステップ
設備診断の最終目的は、「故障を予測して防ぐ」こと。
IoTやAIによる状態監視を導入し、デジタル診断・管理ツールと連携すれば、設備が自ら異常を通知する“スマートメンテナンス”が実現します。
予知保全のメリット
- 突発停止の削減(稼働率向上)
- 整備時期の最適化(コスト削減)
- 設備寿命の延長(更新投資の平準化)
- データによる意思決定(属人化防止)
9. 今後の保全の方向性
保全活動は、点検中心から「データ中心」へと移行しています。IoT・AI・クラウド・教育を組み合わせた保全体制を構築することで、“止まらない・ムダのない・学ぶ工場”が実現します。
まとめ
設備診断と保全管理は、現場の安全と生産性を支える基盤です。
その本質は「データに基づく改善の継続」。
診断ツールの活用・教育・外部連携を組み合わせ、予知保全(Predictive Maintenance)への一歩を着実に進めましょう。







