
油圧ユニットや減速機、潤滑装置などに使用される作動油・潤滑油は、長期使用により水分・異物・酸化生成物が混入して劣化します。
この劣化を放置すると、バルブの固着・シール損傷・ポンプ焼付きなど、重大なトラブルの原因になります。
油劣化チェッカ(油質チェッカ)は、これらの油の状態を数値化し、交換時期を適正に判断するための診断ツールです。
油劣化チェッカとは?
油劣化チェッカは、サンプル油を測定することで、油中の水分・粒子・誘電率・酸化度などを評価する装置です。
近年は、現場で即時測定できるハンディタイプから、オンライン常時監視型まで幅広く利用されています。
- 油の「交換タイミング」を科学的に判断できる
- 異常混入(水・粉塵・金属粉)を早期に検出
- メンテナンス間隔の最適化・廃棄コスト削減に寄与
主要な測定項目と意味
項目 | 意味 | 異常傾向のサイン |
---|---|---|
水分量(ppm) | 水分混入量。エマルジョン化や錆発生の指標。 | 200ppm超で潤滑低下・腐食の危険 |
粒子数(ISO4406) | 油中の微粒子濃度(清浄度クラス) | 15/13/10超過でバルブ固着・摩耗進行 |
誘電率/絶縁抵抗 | 酸化・混入物増加により上昇 | 劣化が進行すると数値上昇 |
酸化度(TAN) | 酸化生成物(酸)の蓄積度合い | TAN値が初期値+0.5以上で交換推奨 |
測定方法の種類
- ハンディタイプ:現場で即時測定。試験紙型や赤外線方式。
- 分析装置型:ラボレベルで水分・酸価・粒子を高精度測定。
- オンライン型:油圧回路に常設し、リアルタイム監視。
測定手順の例(ポータブル式)
- バルブドレンや試験口からサンプル油を採取
- 油温を記録(40〜60℃が目安)
- 機器に注入し、自動測定スタート
- 表示値を記録し、前回データと比較
代表的な診断傾向
測定結果 | 考えられる要因 | 対策 |
---|---|---|
水分量上昇 | 冷却器やシールからの浸水、結露 | 原因箇所補修+オイル交換 |
粒子数増加 | 摩耗粉、外部粉塵、フィルタ詰まり | フィルタ交換・洗浄 |
酸化度上昇 | 高温運転・酸化促進 | 冷却改善・油交換 |
代表的なメーカーと特徴
メーカー | 特徴 |
---|---|
PARKER(パーカー) | オンライン清浄度モニタ・水分センサをラインアップ |
HYDAC(ハイダック) | ISO4406準拠の粒子カウンタを多数展開 |
KYOWA電子工業 | 国内油圧向け携帯型油質チェッカを提供 |
日立Astemo | 大型油圧装置向け連続監視システムを開発 |
オムロン(OMRON) | IoT連携型センサユニットを提供(EtherNet/IP対応) |
診断結果の管理と運用
- 測定データをグラフ化し、トレンドで判断(点ではなく線で管理)
- 水分・粒子・酸化度を「三指標」で管理することで信頼性向上
- 異常検出時は即座に油分析・交換履歴と紐付け
- クラウド保存で複数設備の油質を一元管理
まとめ
油劣化チェッカは、単なる油の検査装置ではなく、設備信頼性とコスト削減を両立する保全ツールです。
劣化の兆候を数値で見える化し、交換時期を科学的に判断することで、設備寿命の延伸と廃棄ロス削減につながります。