
油圧、空圧、冷却水などの流体系設備では、温度・圧力・流量の三要素が運転状態と劣化を示す最も重要な指標です。
これらを常時監視することで、異常兆候の早期発見や設備の安定稼働に直結します。
流体系設備における「三大センサ」の役割
センサ種別 | 主な測定対象 | 異常兆候の例 |
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温度センサ | 油温・冷却水温・エア温度 | 上昇=冷却不良・潤滑不良、低下=流量不足 |
圧力センサ | ライン圧力・バルブ出入口圧 | 低下=漏れ/ポンプ不良、上昇=閉塞・弁詰まり |
流量センサ | 油・空気・冷却水の流速・流量 | 低下=詰まり・ポンプ摩耗、過大=バイパス漏れ |
診断データの見方と異常傾向
現象 | 温度傾向 | 圧力傾向 | 流量傾向 | 想定原因 |
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ポンプ摩耗 | 上昇 | 低下 | 低下 | 内部漏れ・吐出不足 |
回路閉塞 | 上昇 | 上昇 | 低下 | フィルタ詰まり・弁閉塞 |
漏れ発生 | 低下または上昇 | 低下 | 低下 | シール不良・ホース損傷 |
冷却不良 | 上昇 | 正常 | 正常〜低下 | 熱交換器・冷却水ライン問題 |
測定方式の種類
- 温度センサ:熱電対(K型)、白金測温抵抗体(Pt100)など
- 圧力センサ:ひずみゲージ式、ピエゾ抵抗式、MEMS式
- 流量センサ:差圧式、電磁式、超音波式、コリオリ式など
近年はこれらのセンサを組み合わせ、IoTゲートウェイ経由でクラウド上にデータを蓄積・分析する構成が一般的です。
代表的な構成例
- 圧力・温度センサをポンプ出口に設置
- 流量センサを回路末端に設置し、全体バランスを監視
- データロガーで24時間記録し、トレンド化
- 異常値を自動検知し、警報を出力
代表的なメーカーと特徴
メーカー | 特徴 |
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SMC | 空圧ライン用圧力・流量センサが豊富。IO-Link対応。 |
KEYENCE(キーエンス) | オールインワンタイプの流量+圧力監視が可能。 |
オムロン(OMRON) | 多点センシング・ネットワーク対応センサを展開。 |
横河電機(YOKOGAWA) | プラント常設用高精度トランスミッタを提供。 |
パーカー・ハネフィン(PARKER) | 油圧回路用耐圧・高温対応センサをラインアップ。 |
診断運用のポイント
- センサは「点」でなく「流れ」で見る(入口・出口の差を比較)
- 温度・圧力・流量を同一時間軸で監視し、相関を取る
- 閾値だけでなく、変化傾向(上昇率・下降率)を重視
- 異常検知後の履歴を保存し、再発傾向を分析
デジタル化の進展
近年は、IO-Link対応やEtherNet/IP通信により、センサ情報をクラウドに集約することで、リアルタイムの設備状態可視化や、AIによる予兆検知が可能となっています。
この仕組みは次フェーズの「IoT診断」へとつながる基盤技術です。
まとめ
温度・圧力・流量センサは、設備の“健康状態”を定量的に把握する最も基本的な診断ツール群です。
単体測定にとどまらず、複数データの相関解析を行うことで、故障の前兆を早期に検出できます。