チェーンテンショナーは、ローラーチェーン伝動における“たるみ”を自動または半自動で吸収し、適正な張力と噛み合い状態を維持する機械要素です。
テンショナーの適切な選定・配置により、スプロケット歯先の摩耗低減、チェーン跳動・騒音の抑制、寿命延長、伝達効率の安定化が期待できます。
本記事では、チェーンテンショナーの種類・用途・構造、主要メーカーをわかりやすく解説します。
チェーンテンショナーとは(基礎知識)
チェーンテンショナーは、チェーンの伸び(ピン・ブッシュ摩耗や温度変化)や芯間距離の変動を補正し、巻き付け角と歯当たりを安定させる部品です。スプリング・ゴムエラストマー・ガススプリング・油圧などの弾性要素で追従力を発生させ、アイドラスプロケットやテンションローラをチェーン背面に押し当てて張力を与えます。
チェーンを直接スライド面で押さえるスライダ(樹脂ガイド)方式や、ユニット化されたテンショナアーム+ベース金具構成など、装置条件に応じて多様な形式が用意されています。
チェーンテンショナーの種類
- ばね式テンショナー:コイルばね/トーションばねの反力で自動追従。汎用性が高く、設置が容易。
- エラストマー式テンショナー:ゴム・ウレタンの弾性を利用。減衰性に優れ、騒音・振動の低減に有効。
- アイドラスプロケット式:歯付きアイドラで噛み合いを安定化。高負荷・長寿命に適する。
- テンションローラ式:樹脂ローラで背面を押さえる。低騒音・低摩耗、食品等のクリーン用途にも。
- スライダ(樹脂ガイド)式:UHMW-PE等の樹脂ライナでチェーン背面を面支持。簡素・低コスト。
- ガススプリング/油圧式:長ストロークで一定荷重。ストローク余裕が必要な往復・衝撃用途に。
- 手動スライド式(調整ねじ式):取付後に張りを手動設定。定期点検で再調整する前提のシンプル構造。
主な用途
- 動力伝達(減速機~装置側)のチェーンたるみ抑制・巻き付け角確保
- コンベヤ・搬送装置の駆動チェーンの跳動抑制と静音化
- 低温/高温・粉塵・水濡れ環境でのチェーン寿命延長
- 芯間距離が変動しやすい装置(可動軸・温度伸び)の張力安定化
構造と選定ポイント
- 構成:ベース金具、アーム(回転/スライド)、弾性要素(ばね・エラストマー等)、テンション部(アイドラ歯車/ローラ/スライダ)。
- 選定指標:チェーンサイズ(#40~#100等)、線速、必要押付荷重、環境(温湿度・水・薬品・粉塵)、騒音要件、保全方針(無給油・交換周期)。
- 配置:ゆるみ側(戻り側)に設置し、噛み合い起点側の巻き付け角を増やす。チェーンの進行方向とアーム回転方向の関係に配慮。
- 耐久性:アイドラ軸受のシール構造、ローラ材質(樹脂・ゴムライニング)、腐食環境ではSUS仕様を選択。
主なメーカー一覧
- 株式会社椿本チエイン(TSUBAKI):テンショナユニット、アイドラスプロケットの総合ラインアップ。
公式サイトはこちら - 片山チエン株式会社(KANA):ばね式テンショナー、アイドラ、スプロケット周辺機器を標準化。
公式サイトはこちら - 大同工業株式会社(DID):チェーン本体と周辺機器を一体提案。重負荷向け実績多数。
公式サイトはこちら - 小原歯車工業株式会社(KHK):アイドラスプロケット等の標準歯車・周辺部品を供給。
公式サイトはこちら - ミスミグループ本社:テンショナユニット・樹脂スライダ・各種アイドラのEC短納期供給。
公式サイトはこちら
メーカー比較表
メーカー | 主なタイプ | 強み | 想定用途 |
---|---|---|---|
椿本チエイン | ばね式・アイドラ式ユニット | 信頼性・耐久性・品揃え | 一般産業機械・コンベヤ |
KANA | テンショナー/アイドラ一式 | 標準化・入手性・互換性 | 装置組込・保全交換 |
DID | 重負荷チェーン+周辺機器 | 高強度・長寿命 | 重荷重伝動・プラント |
KHK | アイドラスプロケット | 標準歯車由来の選定容易 | 汎用動力伝達 |
ミスミ | ユニット・樹脂スライダ等 | 短納期・カスタム寸法 | FA・自動化装置 |
購入先・販売サイト
Q&A(よくある質問)
Q. テンショナーは“押す向き”に注意が必要ですか?
A. はい。ゆるみ側(戻り側)に配置し、チェーン進行方向に対してテンショナーアームが“追従して回る”向きに設置すると跳動が起きにくくなります。
Q. 高速回転時の騒音を下げたい。
A. 樹脂ローラ式やエラストマー式が有効です。歯付きアイドラは耐久性に優れますが、条件により音が出やすい場合があります。潤滑・ケース剛性も併せて対策します。
Q. 食品・水濡れ環境では何を選べば良い?
A. SUSシャフト・シールドベアリング・樹脂ローラの組み合わせが有効です。水・洗浄剤への耐性とシール性能をカタログで確認してください。