スプラインシャフト(Spline Shaft)は、軸と軸の間でトルクを伝達しながら、同時に軸方向の摺動(スライド)を可能にする機械要素です。
シャフトの外周に歯形(スプライン)が設けられ、対応するスプライン穴(スリーブ)と噛み合うことで、軸の回転を確実に伝えつつ、直線方向の伸縮運動を許容します。
動力伝達機構、搬送装置、ロボット関節部など、多くの産業機械に使われています。
スプラインシャフトとは(基礎知識)
スプラインは、軸と穴の間に多数の歯を設けることで、トルクを均等に伝達する構造です。
キーやキー溝よりも高いトルク伝達能力があり、複数の歯で荷重を分担するため、耐久性や同心度にも優れています。
また、スライド式スプラインでは、軸方向の伸縮運動を許容できるため、熱膨張や位置ズレを吸収する用途にも適しています。
スプラインの種類
- 平行スプライン(ストレートスプライン):歯形が平行で最も一般的。一般動力伝達に使用。
- インボリュートスプライン:歯車に似た歯形。高トルク・高精度用途に多用。
- セレーションスプライン:小歯数・小径用。軽負荷・小型機構に適する。
- スライドスプライン:シャフトとスリーブが摺動可能。伸縮軸や駆動軸に用いられる。
- フラットスプライン:軸端に2面または4面加工を施した簡易スプライン形状。低トルク用途。
主な用途
- 工作機械・ロボットの送り軸・駆動軸
- 自動車のプロペラシャフト・ステアリング機構
- 搬送装置・昇降装置のトルク伝達+伸縮軸
- プレス機・射出成形機などの高負荷回転部
- 建設機械・油圧シリンダなど可動連結部
構造と特徴
- 構成:スプラインシャフト、スプライン穴(スリーブ・ハブ)、保持部品、潤滑部。
- 材質:一般にS45C、S55C、SCM材など。表面焼入れや浸炭処理により耐摩耗性を向上。
- 加工精度:JIS B1603(平行スプライン)、JIS B1604(インボリュートスプライン)などの規格に準拠。
- 潤滑:グリースまたはオイル潤滑。スライドタイプでは摺動抵抗低減のため定期給脂が必須。
- 特徴:高トルク伝達・芯ずれ補正・伸縮対応が可能。キー方式より高寿命。
主なメーカー一覧
- 椿本チエイン(TSUBAKI):動力伝達機器メーカー。スプラインシャフト、カップリング、パワーロックなどを総合展開。
公式サイトはこちら - 片山チエン(KANA):スプロケット・軸部品と合わせてスプライン関連部品を取り扱い。
公式サイトはこちら - 鍋屋バイテック会社(NBK):高精度スプラインシャフト、キーレス結合、伸縮カップリングを展開。
公式サイトはこちら - 三木プーリ(MIKI PULLEY):スライド軸・トルク伝達系ユニットとしてスプライン構造を採用。
公式サイトはこちら - 日本精工(NSK):精密スプラインシャフト・直動部品を提供。リニアガイド・ボールねじとの併用提案も。
公式サイトはこちら - ミスミグループ本社:標準スプラインシャフト・スリーブをEC短納期供給。端面加工対応品もあり。
公式サイトはこちら
メーカー比較表
メーカー | 主力製品 | 強み | 想定用途 |
---|---|---|---|
椿本チエイン | スプライン軸・結合部品 | 信頼性・耐久性 | 動力伝達装置全般 |
片山チエン | 標準部品・シャフト関連 | 汎用性・規格対応 | FA機器・装置組立 |
NBK | 精密スプライン/パワーロック | 高精度・小型化対応 | 自動機・検査装置 |
三木プーリ | スライド軸・結合ユニット | トルク伝達+伸縮性 | 搬送・制御装置 |
NSK | 精密スプライン | リニア部品との親和性 | 精密機械・制御軸 |
ミスミ | 標準スプライン・加工品 | 短納期・カスタム可 | 試作~量産 |
スプラインシャフトの購入先・販売サイト
Q&A(よくある質問)
Q. スプラインとキーの違いは?
A. キーは1本のキーでトルクを伝達しますが、スプラインは複数の歯で均等に力を分担し、高トルクや高精度位置決めに適しています。
Q. スライド式スプラインの潤滑はどうすればよい?
A. グリース給脂やオイルバス方式を採用し、定期的に清掃・補給を行います。粉塵環境ではブーツカバーやシールを併用します。
Q. 標準サイズの規格はある?
A. JIS B1603(平行スプライン)、JIS B1604(インボリュートスプライン)が国内標準規格です。海外ではDIN5480なども使用されます。