
工場や現場で発生する労働災害の多くは、「うっかり」「思い込み」といった人為的なミスが原因です。
このようなヒューマンエラーを防ぐために欠かせないのが危険予知活動(KY活動)です。
本記事では、KY活動の手順やヒューマンエラーの原因分析、効果的な対策を解説します。
危険予知(KY)とは?
KY(Kiken Yochi)とは「危険予知活動」の略称で、作業前に潜在的な危険を想定・共有することで、事故を未然に防ぐ活動です。
チーム全員で危険箇所や不安全行動を洗い出し、「どんな危険があるか」「どうすれば安全か」を話し合うのが基本です。
KY活動の目的
- 事故・ヒヤリハットを未然に防止する
- 安全意識を高め、作業者の判断力を養う
- チーム全体で危険感受性を共有する
KY活動の手順(4ラウンド法)
- 状況把握: 今日の作業内容・周囲環境を確認
- 危険の抽出: どんな危険が潜んでいるかを挙げる
- 対策の検討: 危険を回避・低減する方法を決める
- 指差呼称・実施: 対策を全員で再確認して作業開始
ヒューマンエラーとは?
ヒューマンエラーとは、「やるべきことをやらない」「やらなくてよいことをしてしまう」など、人間の注意力や判断の限界によって起こるミスを指します。
事故の約8割は、このヒューマンエラーが直接・間接的な原因とされています。
主なヒューマンエラーの種類
タイプ | 内容 | 例 |
---|---|---|
スリップ(Slip) | うっかり・操作ミス | スイッチの押し間違い |
ラプス(Lapse) | 記憶・注意の抜け | 工具の締め忘れ |
ミステイク(Mistake) | 判断・理解の誤り | 手順の誤認・思い込み |
バイオレーション(Violation) | ルールの無視・逸脱行動 | 安全装置を外して作業 |
ヒューマンエラーの原因分析(4Mの視点)
エラーの背景には、「人」だけでなく「環境」や「組織」も関係します。
原因分析では、以下の4M(Man・Machine・Media・Management)の観点が有効です。
- Man(人): 知識不足・慣れ・疲労・不注意
- Machine(設備): 操作性の悪さ・表示不備・老朽化
- Media(環境): 騒音・照明不足・温度・湿度
- Management(管理): 教育不足・監督不十分・手順不明確
ヒューマンエラー対策のポイント
① 作業環境の改善
- 照度を確保し、作業エリアを明るく保つ
- 工具・部品を定位置に整理(5S)
- 表示・標識を見やすく統一
② 手順・ルールの標準化
- 作業マニュアルを写真や図で見える化
- 異常時対応を手順書に明記
- 「指差呼称」を習慣化して確認漏れを防止
③ 教育・訓練の充実
- KYミーティングを毎朝実施
- ヒヤリハット事例を教材として共有
- ロールプレイで危険対応訓練を行う
④ 組織的なチェック体制
- ダブルチェック・交差確認を導入
- 安全監査・パトロールを定期実施
- 事故発生時は「人」より「仕組み」を見直す
KY活動とヒューマンエラー対策の融合
KY活動で「潜在的危険」を予知し、ヒューマンエラー対策で「人の弱点」を補うことが重要です。
両者を組み合わせることで、より効果的な安全文化が根づきます。
- KYで危険を「気づける環境」を作る
- エラー対策で「間違えない仕組み」を作る
- 結果として、現場全体の安全レベルが向上
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Q&A
Q. KY活動とヒヤリハットの違いは?
A. KYは作業前の「予防活動」、ヒヤリハットは作業中・後に起きた「事例共有」です。
両者を連携させることで再発防止につながります。
Q. ヒューマンエラーを完全になくすことは可能?
A. 難しいですが、環境・教育・仕組みを整えることで大幅に減らすことは可能です。
「人に頼らない安全設計」が理想です。
Q. 小規模現場でもKY活動は必要?
A. はい。人数が少ないほど危険に気づきにくくなるため、短時間でも話し合う価値があります。