超硬合金は、金属炭化物と鉄系金属を混合・焼結して作られる複合材料です。
混ぜられる金属炭化物や鉄系金属の比率や種類の違いによっては、全く違う硬さになったり、特性自体がかわります。
このページでは、金属炭化物と鉄系金属などの組成素材による種類とそれぞれの特徴を解説します。
※超硬合金そのものについて調べたい方は「超硬合金とは」を参考にしてください。
WC-Co系合金
WC-Wo系合金は、炭化タングステン(WC)と結合相にコバルト(Co)を使用して、混合・焼結した超硬合金です。
WC-Co系合金は、超硬合金の中でも機械特性が最も優れ、超硬合金の代表格といわれます。
一般的に超硬合金といわれる時は、WC-Co系合金のことを指します。
WC-Co系合金の配合比率例
組成(mass%) | 密度(Mg/m3) | 硬度(HRA) | 抗折力(GPa) | ヤング率(GPa) | 熱伝導率(W/m・K) | |
---|---|---|---|---|---|---|
WC | Co | |||||
97 | 3 | 15.1-15.2 | 90-93 | 1.0-1.2 | 668 | 88 |
95 | 5 | 14.8-15.0 | 90-91 | 1.6-1.8 | 620 | 80 |
90 | 10 | 14.3-14.5 | 88-90 | 1.5-1.9 | 584 | 71 |
85 | 15 | 13.8-14.0 | 86-88 | 1.8-2.2 | 548 | ― |
80 | 20 | 13.1-13.3 | 83-86 | 2.0-2.6 | 500 | ― |
75 | 25 | 12.8-13.0 | 82-84 | 1.8-2.7 | 467 | ― |
WC-TiC-Co系合金
WC-TiC-Co系合金は、炭化タングステン(WC)とコバルト(Co)に加えて、炭化チタン(TiC)を混合して、焼結した超硬合金です。
酸化チタン(TiC)は、鉄(Fe)と反応しにくく、耐酸化性が向上するため、鋼向けの切削工具に用いられる超硬合金に混合されます。
WC-TaC-Co系合金
WC-TaC-Co系合金は、炭化タングステン(WC)とコバルト(Co)に加えて、炭化タンタル(TaC)を混合して、焼結した超硬合金です。
炭化チタンと同じように、炭化タンタル(TaC)は、鉄(Fe)と反応しにくく、耐酸化性が向上するため、鋼向けの切削工具に用いられる超硬合金に混合されます。
WC-TiC-TaC-Co系合金
WC-TiC-TaC-Co系合金は、炭化タングステン(WC)とコバルト(Co)に加えて、炭化チタン(TiC)と炭化タンタル(TaC)を混合して、焼結した超硬合金です。
炭化チタン(TiC)と炭化タンタル(TaC)は、鉄(Fe)と反応しにくく、耐酸化性が向上するため、鋼向けの切削工具に用いられる超硬合金に混合されます。
また、炭化チタンと炭化タンタルの比率によっても特性が変化します。
WC-Ni系合金
WC-Ni系合金は、炭化タングステン(WC)とニッケル(Ni)で組成された超硬合金です。
通常の超硬合金は結合相としてコバルト(Co)が使用されて組成されますが、WC-Ni系合金では結合相としてニッケル(Ni)が使用されます。
ニッケル(Ni)を結合相に使用することで非強磁性となることと耐食性が向上することが特徴です。
WC-Ni-Cr系合金
WC-Ni-Cr系合金は、炭化タングステン(WC)とニッケル(Ni)に加え、クロム(Cr)を混合し、組成された超硬合金です。
WC-Ni系合金よりもさらに、耐食性が向上します。
その他の組成素材
超硬合金は上記のような組成が多く用いられますが、その他の化合物が添加されることもあります。
- 炭化ニオブ(NbC)
- 二炭化三クロム(Cr3C2)
- 炭化クロム(Cr4C)
など、炭化ニオブや炭化クロム系の炭化素材を加えられることがその他の組成例となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。超硬合金には、WC-Co系合金以外にも、様々な化合物や炭化物が加えられて合金となります。
使用する用途や求められる特性によっても配合は種類や比率などたくさんあるようです。
その他、超硬合金をもっともっと基礎情報から知りたい方は「超硬合金とは」も参考にしてください。