ギア(歯車)は、回転運動とトルクを伝達・変換する機械要素です。
歯形の噛み合いによって、回転数の増減(減速・増速)、回転方向の変更、トルクの増大などを実現します。モーター・減速機・工作機械・搬送装置など、産業機械の基礎を支える重要部品です。
本記事では、ギアの種類・用途・構造、主要メーカーをわかりやすく解説します。
ギア(歯車)とは(基礎知識)
ギアは、歯面同士の転がり・すべりを管理された形で噛み合わせ、動力を高効率に伝達する機械要素です。
スプロケット+チェーンの伝達と比べ、バックラッシ管理や位置決め精度、伝達効率に優れます。
用途に応じて、直交伝達・平行伝達・同軸伝達などの構成が選択されます。
ギアの種類
- 平歯車(スパーギア):最も一般的。平行軸間での伝達に使用し、製作・管理が容易。
- はすば歯車(ヘリカルギア):かみ合い率が高く静粛。中高速・高荷重に適する。
- かさ歯車(ベベルギア):軸が直交する伝達に使用。ストレート/スパイラルがある。
- ウォームギア:大減速比が一段で可能。自己保持性が得られる場合がある。
- 内歯車(インターナルギア):内周に歯を持つ。遊星減速機のリングギアとして用いられる。
- ラック&ピニオン:回転運動を直線運動へ変換(またはその逆)。直線位置決め用。
- 遊星歯車機構(プラネタリ):同軸で大減速・高トルク・高効率。小型で高出力密度。
主な用途
- モーター+減速機(ギアヘッド)による速度・トルク変換
- コンベヤ・搬送装置の動力伝達、位置決め機構
- 工作機械・FA装置・ロボットの軸駆動・回転制御
- 自動車・建機・産業車両の駆動系
- ラック&ピニオンによる昇降・直線送り
構造と特徴
- 歯形・モジュール:標準はインボリュート歯形。モジュール(m)で歯の大きさを規定。
- 材質・熱処理:機械構造用鋼(S45C等)、合金鋼、炭窒化・浸炭焼入れ、研削で強度・耐摩耗・静粛性を確保。
- 精度等級:JIS等級で歯車精度を管理。位置決め・静音用途ほど高精度が必要。
- 潤滑:歯面荷重・速度に応じた油・グリースの選定。封入・油浴・ミストなど方式を使い分け。
- バックラッシ:温度上昇・組立誤差を見込んだ歯側すき間。ゼロバックラッシ設計は別途工夫が必要。
主なメーカー一覧(標準歯車・精密減速機を含む)
- 小原歯車工業株式会社(KHK):標準歯車の国内大手。材質・モジュール・精度の選択肢が豊富。
公式サイトはこちら - ミスミグループ本社:標準歯車・ラック&ピニオンをECで短納期供給、カスタム寸法にも対応。
公式サイトはこちら - 住友重機械工業(Sumitomo Drive Technologies):サイクロ減速機・遊星減速機など動力伝達の総合メーカー。
公式サイトはこちら - ニデック(旧シンポ)※精密減速機:ロボット・FA向けの高精度遊星減速機を展開。
公式サイトはこちら - 椿本チエイン(TSUBAKI):動力伝達の総合メーカー。減速機・ギアモータをラインアップ。
公式サイトはこちら
メーカー比較表
メーカー | 主力領域 | 強み | 想定用途 |
---|---|---|---|
KHK | 標準歯車・ラック | 選定容易・品揃え豊富 | 装置組込・試作~量産 |
ミスミ | 標準歯車EC・カスタム | 短納期・オンライン設計 | FA・自動化装置 |
住友重機械 | サイクロ・遊星減速機 | 大トルク・高耐久 | 搬送・プラント |
ニデック | 精密遊星減速機 | 高精度・高剛性 | ロボット・位置決め |
椿本チエイン | 減速機・ギアモータ | 総合提案・信頼性 | 一般産業機械 |
購入先・販売サイト
Q&A(よくある質問)
Q. モジュール(m)はどう選べばいい?
A. 伝達トルク・許容応力・歯面強度・軸間距離から決定します。一般的には必要トルクから歯元強度を確認し、標準モジュールに丸めます。
Q. 静音化したい場合のポイントは?
A. はすば歯車の採用、歯面研削による高精度化、バックラッシ最適化、ケース剛性向上、適正潤滑(粘度・添加剤)の選定が有効です。
Q. 高減速比でコンパクトにしたい。
A. 遊星歯車機構やウォーム+平歯車の複合段、サイクロ減速機の採用が有効です。必要出力・許容バックラッシで方式を選定します。