
トルクリミッタ(Torque Limiter)は、設定トルクを超えたときに動力伝達を遮断・滑らせて機械を保護する安全装置です。
モータや減速機からの過大トルクが発生した際に、機械部品の破損を防止します。クラッチ機構や摩擦機構を利用するタイプが多く、搬送装置・包装機・ロボット・工作機械など、トルク伝達の信頼性が求められる装置に広く使用されています。
トルクリミッタとは(基礎知識)
トルクリミッタは、トルク伝達系に組み込み、一定以上のトルクが加わると滑りや分離によって過負荷を吸収・遮断する機構です。
駆動源(モータ)側と従動側(負荷)を機械的に切り離すことで、ギア・軸・ベルトなどの損傷を防止します。
再結合が自動的に行われるタイプや、過負荷時にクラッチが解除されるタイプなど、用途に応じた多様な構造があります。
トルクリミッタの種類
- 摩擦式トルクリミッタ:摩擦板やディスクの滑りでトルクを制限。シンプル構造で安価。
- ボールデテント式:ボールがくぼみに嵌る構造で、過負荷時に外れてトルクを遮断。再結合も容易。
- マグネット式:磁力を利用してトルク伝達。摩耗が少なくクリーン環境に適する。
- エア/油圧制御式:エア圧・油圧でトルクを調整。リモート制御や高トルク機構向け。
- 電子制御式(センサ内蔵):トルク検知+制御信号による遮断制御。高精度用途に対応。
- 安全クラッチ一体型:トルクリミッタ+クラッチ構造。過負荷後の再接続が迅速。
主な用途
- 搬送装置・包装機・ロボットの機械的過負荷保護
- ボールねじ駆動・リニアステージの衝突防止
- コンベヤ・巻取り装置の過負荷・ジャム防止
- 歯車装置・軸継手部の破損防止
- 食品機械・印刷機などの動力系安全対策
構造と選定ポイント
- 構成:摩擦板・スプリング・ボール・カム・ハウジングなどから構成され、設定トルクで作動。
- 作動方式:摩擦滑り型は連続動作に、デテント型は確実遮断に適する。
- 設定トルク:調整ナットやボルトで設定可。設計トルクの1.2〜1.5倍程度で設定するのが一般的。
- 再結合方式:手動再結合、負荷解除後自動復帰、回転同期再結合など用途により選定。
- 応答性:高速応答が必要な場合はボールデテント式や磁気式を採用。
- 潤滑:摩擦型は適度な潤滑が必要。磁気式やボール式はドライ使用可能。
- 環境対応:粉塵・油分環境では封入型、食品・クリーン用途では磁気式が有効。
主なメーカー一覧
- 三木プーリ株式会社(MIKI PULLEY):トルクリミッタの国内トップメーカー。摩擦式・ボールデテント式を幅広く展開。
公式サイトはこちら - 鍋屋バイテック会社(NBK):精密小型トルクリミッタ、クラッチ連動型をラインアップ。
公式サイトはこちら - KANA(片山チエン株式会社):産業用動力伝達機器の一環として、標準型リミッタを展開。
公式サイトはこちら - オリエンタルモーター株式会社:安全クラッチ内蔵の駆動モジュールを展開。
公式サイトはこちら - R+W Coupling(アール・アンド・ダブリュー):高精度・ゼロバックラッシの安全クラッチ。欧州シェア大。
公式サイトはこちら - mayr(マイヤー):ROBAシリーズなど安全クラッチ・トルクリミッタ専門。世界的トップメーカー。
公式サイトはこちら - ミスミグループ本社:標準トルクリミッタをEC短納期で供給。
公式サイトはこちら
メーカー比較表
メーカー | 主力タイプ | 強み | 想定用途 |
---|---|---|---|
三木プーリ | 摩擦式・ボールデテント式 | 国内実績・安定性 | FA・一般機械 |
NBK | 精密トルクリミッタ | 小型・高精度 | 電子機器・ロボット |
KANA | 標準型リミッタ | 汎用・高信頼性 | 搬送・駆動系 |
オリエンタルモーター | 安全クラッチ一体 | モジュール提案 | 小型FA装置 |
R+W | ゼロバックラッシ式 | 精密・高応答 | 工作機械・ロボット |
mayr | 安全クラッチ | 機能安全・耐久 | 産業機械・搬送 |
ミスミ | 標準EC品 | 短納期・コスパ | 試作・小ロット |
購入先・販売サイト
Q&A(よくある質問)
Q. トルクリミッタとトルクレンチはどう違う?
A. トルクリミッタは機械に組み込んで過負荷を防ぐ「動的保護装置」、トルクレンチは手作業で締付トルクを管理する「測定工具」です。
Q. 過負荷発生後、自動的に復帰させたい場合は?
A. 自動復帰式トルクリミッタ(ボールデテントタイプ)を選定します。負荷除去後に回転方向を戻すと自動で再結合します。
Q. 摩擦式リミッタのメンテナンス周期は?
A. 使用頻度やトルク条件によりますが、一般的には1,000〜2,000時間ごとに摩擦板の磨耗点検・清掃を推奨します。