
スクリューポンプ(Screw Pump)は、ねじ状のローター(スクリュー)の回転で液体を連続的に送り出す容積式ポンプです。
高粘度液体やスラリー、潤滑油、排水などの搬送に強く、安定した送液と静音性を兼ね備えています。
この記事では、スクリューポンプの構造・原理・用途・代表メーカーをわかりやすく解説します。
スクリューポンプとは?(基礎知識)
スクリューポンプは、スクリュー(ねじ)状のローターが回転して流体を押し出す容積式ポンプです。
ローターとステーター(固定側)の間に閉じ込められた液体が、ねじ溝に沿って一定速度で移動する構造になっています。
他のポンプに比べて、脈動が少なく、高粘度液体や気泡を含む流体でも安定した送液が可能です。
構造と仕組み
基本構造は以下の通りです。
- スクリューローター:金属または樹脂製のねじ状回転体。1軸または多軸構造。
- ステーター:弾性ゴムなどで成形された固定部。ローターの形に沿って流路を形成。
- 吸込口/吐出口:流体の入口と出口。
- シャフトシール:漏れを防ぐシール部。メカニカルシールまたはパッキン式。
- 駆動モーター:減速機を介してローターを回転。
作動原理
ローターが回転すると、ローターとステーターの間に生じた「密閉空間」が吸込側から吐出側へと移動し、液体を押し出します。
流れが途切れず、吐出圧力も安定しているため、粘性液や固形物を含む流体にも対応します。
特徴
- 高粘度液・スラリー・汚泥でも送液可能。
- 脈動が少なく、定量送液に適する。
- 静音・低振動で長時間運転が可能。
- 部品点数が少なく、メンテナンスが容易。
- 吸引力が高く、自吸性に優れる。
スクリューポンプの種類
- 単軸スクリューポンプ(モーノポンプ):1本のスクリューが弾性ステーター内で回転。汚泥・食品・化学分野に多い。
- 二軸スクリューポンプ:2本のスクリューが噛み合いながら回転。気液混合や高圧送液に適する。
- 三軸スクリューポンプ:3本のスクリューで圧送。潤滑油や燃料油など低騒音で安定流量。
- マルチスクリューポンプ:高圧・大流量対応。産業設備や油圧機器に使用。
用途
- 汚泥・排水・スラリーの移送
- 粘度の高い樹脂・オイル・グリースの供給
- 食品・飲料・医薬品製造ライン(粘性液送液)
- 燃料油・潤滑油の移送・循環
- 化学薬品・添加剤の定量注入
選定のポイント
- 流体の粘度・粒径・温度
- 必要流量・吐出圧力
- スクリュー材質(SUS・硬化鋼など)
- ステーター材質(NBR・EPDM・FKMなど)
- 駆動モーター出力・減速比
主なメーカーと特徴
日機装株式会社(NIKKISO)
産業用スクリューポンプの大手メーカー。化学薬品・燃料・潤滑用途に豊富な実績。
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株式会社イワキ
定量・薬液ポンプ分野で有名。小型スクリュー式・マグネット式ポンプを展開。
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新明和工業株式会社
汚泥処理・排水処理設備向けスクリューポンプを製造。公共インフラ分野で実績多数。
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モーノポンプ株式会社(MONO)
単軸スクリューポンプのパイオニア。食品・化学・排水分野に強み。
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メーカー比較表
メーカー | 主力製品 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|---|
日機装 | 二軸・三軸スクリューポンプ | 高圧・高効率 | 化学・潤滑 |
イワキ | 小型スクリューポンプ | 薬液・定量送液 | 研究・ラボ |
新明和工業 | 汚泥処理用スクリューポンプ | 耐摩耗・長寿命 | 排水・環境設備 |
モーノポンプ | 単軸スクリューポンプ | 静音・定流量 | 食品・化学・汚泥 |
購入先・通販サイト
Q&A
Q. スクリューポンプは気泡を含む液体でも使えますか?
A. はい。構造上、気液混合でも安定した送液が可能です。エア噛みしにくいのが特徴です。
Q. ステーターの交換周期は?
A. 流体の性状にもよりますが、一般的に運転時間3,000〜5,000時間が目安です。摩耗や膨潤が見られたら交換を推奨します。
Q. ドライ運転はできますか?
A. 基本的に不可です。潤滑性が不足するとステーターが焼損する恐れがあります。
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