
ペリスタルティックポンプ(Peristaltic Pump/チューブポンプ)は、チューブ(ホース)をローラーで押しながら流体を移送する容積式ポンプです。
流体がチューブ内だけを通るため、汚染や漏れがなく、薬液・食品・医療・分析装置などの分野で広く使用されています。
この記事では、ペリスタルティックポンプの構造・種類・用途・代表メーカーをわかりやすく解説します。
ペリスタルティックポンプとは?(基礎知識)
ペリスタルティックポンプは、ローラーやシューがチューブを順に押しつぶして流体を送り出す容積式ポンプです。
液体はチューブ内のみを通過するため、ポンプ本体と流体が直接触れません。
これにより、衛生的・メンテナンス性が高い・薬品や粘性液に強いといった特長があります。
構造と仕組み
基本構造は以下の通りです。
- チューブ:柔軟なホース部。流体が通る経路で、シリコン・PVC・フッ素系など用途により選択。
- ローラー(またはシュー):チューブを押しつぶす可動部。ローラーの数で流量特性が変化。
- ローターヘッド:ローラーを取り付けた回転部。
- ハウジング:チューブを支持するケーシング部。
- 駆動モーター:一定速度でローターを回転させる。
作動原理
ローターが回転すると、ローラーがチューブを押しつぶして密閉区画を形成します。
その圧力によって液体が一方向に移動し、ローラーが離れるとチューブが復元して吸入が行われます。
このサイクルを連続することで、安定した送液が可能になります。
特徴
- 液体がチューブ以外の部品に触れない(汚染防止・クリーン移送)。
- 逆流防止弁が不要(チューブの弾性で逆流しない)。
- 流量制御が容易(モーター回転数で制御可能)。
- メンテナンスはチューブ交換のみで簡単。
- 粘度・薬品性の影響を受けにくい。
ペリスタルティックポンプの種類
- ローラー式:複数のローラーでチューブを連続的に圧迫。小型・低流量タイプに多い。
- シュー式:ローラーの代わりに滑らかなシューで圧迫。中〜大流量用に適する。
- 精密チューブポンプ:少流量を高精度で送液。研究・医療・分析機器向け。
- 工業用チューブポンプ:大口径チューブを採用し、化学薬品・スラリー搬送に対応。
用途
- 化学薬品・試薬の移送・注入
- 医療・分析装置の送液系
- 食品・飲料製造(果汁・ソースなど)
- 塗料・インク・粘性液の定量供給
- 廃水・スラリー処理(簡易注入)
選定のポイント
- 流量(mL/min〜L/min)
- チューブ材質(シリコン・フッ素・CRなど)
- 対応流体(薬品性・粘度・温度)
- チューブ寿命・交換頻度
- 連続運転時間と制御方式(アナログ・デジタル)
主なメーカーと特徴
株式会社イワキ
小型・精密チューブポンプの国内トップメーカー。薬液注入・分析装置に多数採用。
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タクミナ株式会社
定量ポンプ分野の大手。医療・研究向けの高精度送液ポンプを展開。
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ウエルコ社(WELCO)
小型ペリスタルティックポンプ専門メーカー。コンパクト設計とチューブ寿命に定評。
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マスターフレックス(Masterflex)
世界的チューブポンプブランド。耐薬品チューブと制御装置のラインアップが豊富。
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メーカー比較表
メーカー | 主力製品 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|---|
イワキ | 精密チューブポンプ | 薬液注入・高精度制御 | 研究・実験装置 |
タクミナ | 定量送液ポンプ | 定流量・デジタル制御 | 医療・製薬・分析 |
ウエルコ | 小型チューブポンプ | 省スペース・耐久チューブ | FA機器・分析 |
マスターフレックス | 産業用ペリスタルティックポンプ | 耐薬品性・大流量対応 | 化学・水処理 |
購入先・通販サイト
Q&A
Q. ペリスタルティックポンプの最大のメリットは?
A. 液体がチューブにしか触れないため、汚染リスクがなくメンテナンスも簡単です。
Q. チューブの寿命はどれくらい?
A. 材質や使用液によりますが、一般的に100〜500時間が目安です。圧力・回転数を下げると寿命が延びます。
Q. 高粘度液でも使用できますか?
A. はい。粘度数万cP程度まで対応可能ですが、流量が低下するため高トルクモーターが必要です。
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