
冷却塔(クーリングタワー、Cooling Tower)は、水を循環させて熱を外気中に放散する装置です。
チラーや熱交換器、温調ユニットなどの冷却システムと組み合わせて使用され、工場設備・ビル空調・発電設備などの熱負荷を効率的に下げる役割を担っています。
この記事では、冷却塔の仕組み・種類・用途・代表メーカーをわかりやすく解説します。
冷却塔とは?(基礎知識)
冷却塔は、加熱された冷却水を空気と接触させて冷やし、再び設備に戻すための装置です。
水が蒸発する際の気化熱を利用して冷却する仕組みで、外気温よりも低い温度まで水を冷やすことが可能です。
チラーや熱交換器、温調ユニットの「冷却源」として設置されることが多く、エネルギー効率と安定運転に大きく関わります。
仕組みと構造
冷却塔の基本構造は次の要素から成り立ちます。
- 充填材(フィル):水と空気を効率的に接触させるための熱交換媒体。
- 散水装置:温水を均等に分散し、冷却効率を高める。
- ファン・送風機:空気を塔内に取り込み、水と接触させる。
- 水槽(ベイスン):冷却された水を一時的に貯留する部分。
- モーター・減速機:送風機を駆動する動力源。
- ケーシング:外気と水を導く塔体構造。FRPや鋼板製が多い。
動作原理
冷却塔は「蒸発潜熱」を利用して冷却を行います。
- 設備から戻った温水を塔の上部から散水。
- ファンで外気を取り込み、水と空気を接触させる。
- 水の一部が蒸発し、その気化熱によって残りの水が冷却される。
- 冷却された水が下部の水槽に集まり、再び設備へ循環。
この繰り返しにより、継続的な熱放散が行われます。
冷却塔の種類
① 通風方式による分類
- 強制通風式(Forced Draft):ファンを下部に設置し、空気を押し上げる方式。コンパクトで低騒音。
- 誘引通風式(Induced Draft):ファンを上部に設置し、空気を引き上げる方式。冷却効率が高く一般的。
- 自然通風式(Natural Draft):大型塔で自然上昇気流を利用。発電所などで採用。
② 構造による分類
- 開放式(湿式)冷却塔:水と空気が直接接触。冷却効率が高く、最も一般的。
- 密閉式(ドライ/セミドライ式):冷却水がコイル内を循環し、外気と直接触れない。メンテナンス性に優れる。
③ 設置形態による分類
- パッケージ型:小型・中型設備用。工場・ビル空調で多用。
- フィールド組立型:大型プラント・発電所用。現地施工で対応。
用途
- チラー・熱交換器の冷却源
- 空調システム(冷水循環)の放熱
- 発電・化学プラントの冷却ライン
- 射出成形・金型冷却水の熱放散
- 冷凍機・油圧装置の二次冷却
選定のポイント
- 必要冷却水量(L/min)と冷却範囲(℃)
- 設置場所の外気温・湿度条件
- 設置スペース・騒音規制
- 通風方式(誘引/強制)
- 水質管理・スケール対策
主なメーカーと特徴
荏原冷熱システム株式会社
冷却塔業界のトップメーカー。誘引通風式・密閉式・大型フィールド型まで幅広く対応。
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荏原製作所株式会社
工場・発電所用の大型冷却塔を多数手がける。高効率・長寿命設計。
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新晃工業株式会社
ビル空調・産業設備向け冷却塔を展開。静音・省エネ・防錆設計に強み。
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三菱電機株式会社
空調設備用のコンパクト冷却塔を展開。チラーとのシステム連携に優れる。
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共立冷熱株式会社(KYORITSU)
中小規模向けパッケージ型冷却塔に特化。設置性・メンテナンス性が高い。
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メーカー比較表
メーカー | 主力製品 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|---|
荏原冷熱システム | 誘引通風式・密閉式 | 高効率・大型対応 | プラント・空調設備 |
荏原製作所 | フィールド組立型 | 長寿命・高耐久 | 発電・化学設備 |
新晃工業 | パッケージ型冷却塔 | 静音・防錆 | ビル空調・工場設備 |
三菱電機 | コンパクト冷却塔 | 省エネ・制御連携 | 空調・チラー連動 |
共立冷熱 | 中小型パッケージ | メンテ性・設置性重視 | 中小設備・工場 |
購入先・通販サイト
Q&A
Q. 冷却塔とチラーの違いは?
A. チラーは冷媒で液体を直接冷却する装置、冷却塔はチラーや設備の排熱を外気へ放出する装置です。
チラーの「冷却源」として冷却塔が機能します。
Q. 開放式と密閉式のメリットは?
A. 開放式は冷却効率が高い一方、水質管理が必要です。
密閉式はスケールや藻の発生が少なく、メンテナンス性に優れています。
Q. 冬季に冷却塔は止めた方が良い?
A. 冬季でも冷却が必要な場合は運転を続けますが、凍結防止ヒーターやドレン対策が必要です。
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