
エアドライヤ(Air Dryer)は、コンプレッサで作られた圧縮空気中の水分を除去する装置です。
圧縮空気には湿気や水滴が含まれており、そのまま使用すると錆や詰まり、品質不良の原因になります。
この記事では、エアドライヤの仕組み・種類・用途・代表メーカーをわかりやすく解説します。
エアドライヤとは?(基礎知識)
エアドライヤは、圧縮空気中の水分を除去して乾燥空気を供給する装置です。圧縮時に発生する水分や結露を除去することで、空圧機器や配管の錆・詰まりを防ぎ、装置の寿命を延ばし、安定した動作を保ちます。
コンプレッサのすぐ下流に設置され、エアフィルターやタンク、空圧ユニットなどと連携して使用されます。
構造と仕組み
エアドライヤは、以下の基本構成で動作します。
- 熱交換器:圧縮空気の熱を効率的に冷却または再加熱。
- 冷却ユニット:冷媒や圧縮冷却を用いて空気中の水分を凝縮。
- 水分分離器:凝縮水を分離して排出。
- ドレン排出装置:自動または手動でドレン(排水)を排出。
- 制御盤:圧力・温度を監視し、自動運転を制御。
動作原理
エアドライヤは「冷却」または「吸着」により空気中の水分を除去します。
- コンプレッサで圧縮された空気がエアドライヤに流入。
- 冷却または吸着により空気温度を下げ、含有水分を凝縮または吸着除去。
- 凝縮水をドレン分離器で除去。
- 乾燥した空気を空圧ラインに供給。
エアドライヤの種類
① 冷凍式エアドライヤ(Refrigerated Air Dryer)
最も一般的なタイプで、冷媒を用いて空気を冷却し、水分を凝縮除去します。保守が容易で省エネ性に優れ、一般工場の空圧供給ラインに広く使用されます。
- 露点温度:5〜10℃程度
- 特徴:安価・メンテ容易・安定動作
- 用途:汎用FAライン・工具駆動・エアブロー
② 吸着式エアドライヤ(Desiccant Air Dryer)
乾燥剤(シリカゲルやアルミナ)を使って空気中の水分を吸着除去します。極めて低い露点(−40℃以下)が必要な場合に使用されます。
- 露点温度:−20〜−70℃程度
- 特徴:高乾燥性能・極低湿用途
- 用途:電子部品製造・塗装・医薬品・分析装置
③ メンブレン式エアドライヤ(Membrane Air Dryer)
中空糸膜を通して水分を透過させる方式。電源不要で小型・静音。ポータブル装置や分析機器などに適しています。
- 露点温度:−10〜−30℃程度
- 特徴:小型・電源不要・メンテ少
- 用途:精密機器・小型設備・研究装置
用途
- 空圧ユニット・エアシリンダの駆動空気供給
- 塗装・コーティング工程のエア乾燥
- 電子部品・食品・医薬分野の除湿供給ライン
- クリーンルーム・分析装置の空気安定化
- 寒冷地での圧縮空気ライン凍結防止
選定のポイント
- 必要風量(L/min)と使用圧力(MPa)
- 露点温度(目標乾燥度)
- 設置環境(温度・湿度・冷却方式)
- 省エネ性・メンテナンス性
- 冷媒タイプ(R-134aなど)や乾燥剤交換周期
主なメーカーと特徴
アネスト岩田株式会社(ANEST IWATA)
コンプレッサと統合したエアドライヤを多数展開。信頼性と静音性が高く、国内シェア上位。
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オリオン機械株式会社(ORION)
冷凍式・吸着式ともにラインナップ。省エネ・低露点対応モデルが豊富。
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SMC株式会社
メンブレン式を含む多様なエアドライヤを提供。FAラインの一体制御に強い。
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CKD株式会社
自動機・クリーン設備向けに吸着式・無発熱再生型ドライヤを展開。低露点・高信頼設計。
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日立産機システム株式会社
冷凍式ドライヤのロングセラーメーカー。大風量・省エネ・長寿命モデルを展開。
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メーカー比較表
メーカー | 主力製品 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|---|
アネスト岩田 | ADシリーズ | 静音・省スペース・高信頼 | FA・塗装設備 |
オリオン機械 | RAX・ARSシリーズ | 冷凍/吸着式対応・省エネ | 一般工場・分析装置 |
SMC | IDシリーズ | メンブレン・吸着両対応 | FAライン・装置組込み |
CKD | ADP・ADLシリーズ | 無発熱再生型・低露点 | クリーンルーム・自動機 |
日立産機 | HADシリーズ | 冷凍式・堅牢設計 | 工場設備・汎用空調 |
購入先・通販サイト
Q&A
Q. 冷凍式と吸着式の違いは?
A. 冷凍式は汎用的でコストが低く、吸着式は極めて乾燥度が高く、精密・特殊用途に適しています。
Q. メンブレン式のメリットは?
A. 電源不要で小型・軽量、静音運転が可能なため、移動機器や実験設備に最適です。
Q. ドレン処理はどう行う?
A. ドレンタンクまたは自動ドレン排出弁(オートドレンバルブ)を設け、
定期的に水分を排出します。排出忘れは圧縮空気汚染の原因になります。
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