
モーター(電動機)は、工場設備や生産ラインの駆動源として最も重要な機器の一つです。
長期的な安定運転のためには、定期的な点検・保守が欠かせません。
本記事では、モーターの点検項目・保守方法・よくある異常の原因と対策について解説します。
モーターの点検・保守とは?
モーター点検とは、回転機械の健全性を確認し、異常や故障の兆候を早期に発見するための保全活動です。
日常点検・定期点検を計画的に実施することで、突発停止や焼損などのトラブルを未然に防ぎます。
点検の目的
- 回転軸・ベアリングの摩耗を防止
- 絶縁劣化やコイル焼損の防止
- 振動・騒音・発熱の早期検出
- 生産停止リスクの低減
点検周期の目安
- 日常点検: 運転時の音・振動・温度を確認
- 月次点検: 絶縁抵抗測定・グリース漏れ確認
- 年次点検: ベアリング交換・内部清掃・配線確認
モーターの使用環境(高温・粉塵・湿気)によって周期を短縮する場合もあります。
日常点検項目
- 運転音に異常(うなり音・軸音・摩擦音)がないか
- 振動・揺れがないか(アンバランス・軸ずれ)
- 本体・軸受部の温度が高すぎないか
- 異臭(コイル焼け・潤滑油焦げ)がないか
- 端子台やケーブルに緩み・変色がないか
定期点検項目
① 絶縁抵抗の測定
メガー(絶縁抵抗計)を使用してモーターの絶縁状態を確認します。
0.5MΩ未満の場合は絶縁不良の可能性があります。
② ベアリングの状態確認
回転部の異音・振動をチェックし、グリース漏れや軸の摩耗を点検します。
必要に応じてグリースの補充・交換を行います。
③ 外観・内部清掃
通風口・冷却ファン・フィン部に付着した粉塵を除去します。
埃や油分の付着は放熱効率を低下させ、焼損の原因になります。
④ 電圧・電流バランスの確認
三相モーターの場合、各相の電流値が大きく偏っていないかを確認します。
電流バランスの差が10%以上ある場合は負荷不均等の可能性があります。
⑤ 軸芯ずれ・カップリング点検
モーターと機械の接続部(カップリング)に偏心・ズレがないか確認。
アライメント不良は振動や軸受損傷の原因になります。
よくある異常と原因
現象 | 主な原因 | 対策 |
---|---|---|
異常振動 | アンバランス・軸芯ずれ・ベアリング摩耗 | バランス調整・軸受交換・芯出し |
異常音 | ベアリングの損傷・グリース不足 | 給脂・ベアリング交換 |
過熱 | 通風不良・過負荷・電流アンバランス | フィン清掃・負荷調整・電源確認 |
焼損 | 絶縁劣化・過電流・冷却不良 | 絶縁測定・配線確認・オーバーホール |
点検・診断に使われる主な測定機器
- 絶縁抵抗計(メガー): 絶縁劣化を数値で確認
- 振動計: ベアリング異常を検出
- 赤外線サーモグラフィ: 発熱箇所の可視化
- 回転計(タコメータ): 回転速度の確認
- 電流クランプメータ: 電流値バランスのチェック
おすすめの点検ツール
Q&A
Q. モーターの点検周期はどのくらいですか?
A. 日常点検は毎日、絶縁測定は3〜6か月に1回、ベアリング交換は1〜2年に1回が目安です。
Q. 異音がする場合はすぐ停止すべきですか?
A. 異常音が連続して発生する場合は直ちに停止し、ベアリングやカップリングを確認してください。
Q. グリースはどのような種類を使用すればよいですか?
A. 一般的にはリチウム系グリースを使用しますが、耐熱・耐水条件に応じて選定が必要です。