
設備の異常は「音」に現れることが多く、騒音診断は振動診断と並ぶ重要な保全技術です。
この記事では、騒音データの測定・分析を通じて設備異常を早期発見する方法や、防音対策の実践ポイントを解説します。
騒音診断とは?(基礎知識)
騒音診断とは、機械や設備が発する音を定量的に測定・分析し、異常音やトラブルの兆候を検出する手法です。
単なる「騒音レベルの確認」ではなく、音の種類や周波数から原因を推定します。
- ベアリングやギアの損傷による異音
- エア漏れ・圧縮空気ラインのリーク音
- ファン・ブロワの羽根の損傷音
- モータの偏心・磁気不均衡音
これらを定期的にモニタリングすることで、突発的な故障を防ぎ、設備稼働率を維持できます。
音の種類と分析の基本
騒音診断では、音を「音圧レベル(dB)」だけでなく「周波数特性」で捉えることが重要です。
音の種類 | 特徴 | 主な発生原因 |
---|---|---|
連続音 | 一定のリズムで続く音。 | ファン・モータ・ポンプなどの定常運転。 |
衝撃音 | 断続的・周期的に発生する短音。 | ギアの欠損、ベアリングのピッチ欠け。 |
異常高周波音 | 人間の耳では聞き取りにくい高音。 | エア漏れ、スパーク、摩擦異常。 |
異常音の診断ポイント
音の変化は、設備内部の劣化や不具合を知らせる重要なシグナルです。以下に代表的な異常音と原因を示します。
異常音の特徴 | 主な原因 | 対策 |
---|---|---|
ゴロゴロ・カラカラ音 | ベアリングの摩耗、潤滑不足 | グリス補給・軸受交換 |
キーン・ヒューヒュー音 | ベルトの張りすぎ・プーリ摩耗 | 張力調整・プーリ交換 |
カンカン・ガタガタ音 | ボルトのゆるみ、振動共振 | 増締め・防振材追加 |
シュー・ピュー音 | エア漏れ、バルブの損傷 | リーク箇所の補修・交換 |
測定と分析の流れ
- 騒音計または音響分析装置で測定(A特性/C特性)
- 周波数分析(FFT)で異常成分を抽出
- 通常音と比較して異常音を特定
- 異常発生源を確認(配管・機構部・電気部品など)
- 修理・再測定により改善確認
短期的な測定だけでなく、定点での継続記録により、劣化傾向を把握することが可能です。
防音・遮音対策の基本
診断により異常が解消しても、作業環境の快適化には防音対策も重要です。
- 防音カバー・吸音パネルの設置
- 防振ゴム・ベース固定の強化
- 配管の支持間隔・曲げ部の補強
- 防音シート・遮音カーテンによる囲い込み
対策前後の騒音レベルを比較して効果を確認し、データとして管理するのがおすすめです。
代表的な騒音診断・解析機器
メーカー | 主な製品・特徴 |
---|---|
リオン(RION) | 精密騒音計やFFT分析装置を展開。環境・設備両対応。 |
小野測器(ONO SOKKI) | 音響・振動解析装置、異常音検出に特化した分析ソフトあり。 |
キーエンス(KEYENCE) | 非接触音響センサを活用した自動検知システムを提供。 |
日置電機(HIOKI) | モータ・変圧器の異常音解析にも対応するポータブル機器。 |
まとめ
音による設備診断は、現場で簡単に実施できる有効な保全手法です。
日常点検の中で「いつもと違う音」に気づく感覚を養い、騒音データを活用して異常の早期発見と再発防止につなげましょう。
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