赤外線サーモグラフィ診断の応用|電気盤・モータ・配管の異常を温度分布で可視化する

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赤外線サーモグラフィは、設備の異常や劣化を非接触で可視化できる診断ツールです。

この記事では、基礎的な仕組みを踏まえ、電気盤・モータ・配管・ベアリングなど現場でよく行われる診断事例と、判定・報告の実務ポイントを紹介します。



応用診断の目的とメリット

基礎診断では温度上昇箇所を特定することが中心でしたが、応用編ではさらに一歩進め、「どのような傾向で」「何が原因で」加熱しているかを判断します。

  • 接触抵抗、断線、絶縁劣化などの電気的要因
  • 摩擦・潤滑不良、偏荷重などの機械的要因
  • 流体詰まり、断熱材劣化などの熱的要因

電気盤の赤外線診断

観察ポイント

  • 端子・母線・ブレーカ接続部
  • ケーブルクランプ部・中間ジョイント
  • ヒューズ・変圧器・整流器の表面
現象 温度傾向 主な原因 対応策
局所的な高温 周囲比+20℃以上 締付け不良・接触抵抗上昇 増締め・端子交換
相ごとの温度差 1相のみ高温 負荷不平衡・配線誤接続 相電流測定・負荷分散
全体的な過熱 盤内平均温度上昇 換気不足・ファン停止 冷却経路点検・清掃

モータ・軸受部の診断

観察ポイント

  • モータ筐体(軸受・巻線側)
  • 接続箱・冷却フィン
  • カップリング周辺・軸方向の温度分布
現象 温度傾向 想定原因 補足診断
軸受片側だけ高温 左右差+10℃以上 芯ずれ・潤滑不良 振動・グリース分析
巻線側の全体加熱 定格+15℃超 過負荷・冷却不良 電流波形・風量確認
フィン全体の温度上昇 外気温比+30℃超 埃付着・ファン停止 清掃・フィルタ交換

配管・バルブ・ヒータ系統の診断

  • 断熱材劣化による熱損失の増大
  • ヒータ断線・制御不良による加熱ムラ
  • バルブ閉塞・流体詰まりによる温度異常

定常運転時の温度分布を定期記録し、色スケールを統一することで、「差分比較」による経時変化を明確にできます。

撮影・分析の実務ポイント

  • 放射率設定:金属表面は黒テープを貼付し正確に測定
  • 距離と角度:できるだけ直角に撮影し、距離は2〜3mを目安
  • 温度スケール:同一設備は全て同一スケールで比較
  • 基準データ:同型設備の健全部を「比較基準」として保存

報告書作成と運用

  1. 撮影データをExcelまたは診断ソフトに取り込み
  2. 温度・外観・判定(RAG)をセットで記録
  3. 判定基準:健全(G)=+5℃以内、注意(A)=+10℃、異常(R)=+15℃以上
  4. 是正処置の有無・完了日を追記して管理

代表的な製品・メーカー

メーカー 特徴
FLIR(フリアー) 工業用サーモカメラの代表格。Wi-Fi転送・自動解析対応。
日置電機(HIOKI) データロガー連携型。温度計測と併用可能。
キーエンス(KEYENCE) 固定設置タイプ。製造ラインでの常時監視に最適。
日本アビオニクス(AVIO) 高精度測定・長距離撮影に強い。電力設備診断向け。

他手法との併用による精度向上

併用ツール 補完できる情報
振動計 軸受温度上昇の原因(芯ずれ・摩耗)の判別
絶縁計・監視リレー 電気加熱が絶縁劣化に起因するかの判定
超音波リーク検査 圧縮空気漏れによる冷却不良の検知

まとめ

赤外線サーモグラフィ診断は、「異常を見つける」だけでなく、設備の変化を“数字で追う”ための基礎データ収集にも最適です。

温度上昇の背後にある要因を他測定と組み合わせて特定することで、診断の精度と再現性が大幅に向上します。

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