油圧・空圧・冷却系統は、製造設備や生産ラインの「血管」にあたる部分です。
圧力や流量、油や水の状態が正常でなければ、いくらモータや制御が正常でも設備は安定稼働しません。
本記事では、これらの流体系設備を診断・保全するための主要ツールを体系的にまとめます。
1. 油圧システム診断の基本ツール
油圧回路では、ポンプ・バルブ・アクチュエータなどの内部状態を「圧力」「流量」「温度」から把握します。
油圧テスタ(圧力・流量チェック)
ポンプやシリンダの性能確認、回路圧力損失の測定に使われます。
アナログゲージ式からデジタル一体型まであり、現場の油圧トラブル診断の第一歩です。
油劣化チェッカ
作動油の「健康状態」を測定し、交換時期を科学的に判断するツール。
水分・粒子・酸化度を定期的にチェックすることで、機器寿命の延長につながります。
2. 空圧システムの診断ツール
コンプレッサから生産設備までの空気ラインでは、圧力損失や漏れが大きなエネルギーロスとなります。
空圧漏れ検出器(リークディテクタ)
圧縮空気の漏れ音(超音波)を検知する診断ツール。
稼働中でも点検でき、省エネ改善の効果が高い設備保全の定番機器です。
温度・圧力・流量センサ
空圧・油圧・冷却系を問わず、三大要素の同時監視が重要。
IO-Link対応のデジタルセンサを活用すれば、予兆監視の精度が高まります。
3. 冷却水・熱交換器系の診断ツール
冷却水や熱交換器は、スケールや腐食による熱交換効率低下が大きな課題。
水質モニタリングにより、効率と寿命を守ります。
冷却水水質計(導電率計・pH計)
導電率やpHを監視することで、スケールや腐食の兆候を早期発見。
冷却塔・チラーの保守に欠かせない基本ツールです。
4. 真空系設備の診断ツール
真空ポンプ・チャンバーなどの設備では、真空度の安定性が性能の指標です。
真空度測定器により、リークやポンプ劣化を定量的に評価できます。
真空度測定器(真空ゲージ)
粗真空から高真空まで幅広く対応し、装置の真空性能を見える化します。
真空の立上り曲線を比較することで、リークや汚染を特定できます。
5. データ監視と今後の方向性
流体系設備では、単発測定だけでなくトレンド監視とクラウド連携が主流になりつつあります。
各センサ・チェッカをデータロガーやIoTシステムに接続し、予兆保全や遠隔監視に活用することで、異常を「起きる前に止める」体制が構築できます。
まとめ
油圧・空圧・冷却・真空系は、いずれも流体の特性変化が設備トラブルの前兆を示します。
今回紹介したツール群を組み合わせて活用することで、「予防保全から予知保全へ」のステップを実現できます。
現場での測定データを資産とし、より持続可能な工場運営を目指しましょう。







