設備診断の基礎知識と目的|劣化を早期に見抜くための考え方

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モータ、ポンプ、油圧ユニット、冷却装置など、工場設備は日々の運転によって少しずつ劣化します。

設備診断とは、こうした「見えない変化」をデータや測定によって見える化し、重大な故障を防ぐための判断材料を得る活動です。




1. 設備診断とは?

設備診断とは、各機器の稼働状態・劣化度・異常兆候を、測定・解析・評価によって明らかにする活動です。

「設備を止めないための医学的検査」に例えられ、予防保全・予知保全の基盤となります。

主な目的

  • 設備の異常を早期に発見し、故障を未然に防ぐ
  • 劣化状態を定量化し、交換・整備時期を科学的に判断
  • 設備の寿命延長と稼働率向上を図る
  • 保全コストを最適化(過剰整備・突発修理の削減)

2. 設備診断の3つのアプローチ

診断の目的やタイミングに応じて、次の3段階で分類されます。

分類 概要 主な手法・ツール
事後保全(Breakdown Maintenance) 故障発生後に修理・交換する方式。 交換履歴・原因解析。
予防保全(Preventive Maintenance) 時間・使用回数に基づいて計画的に整備。 定期点検・周期交換。
予知保全(Predictive Maintenance) 状態監視データに基づき、劣化兆候を判断。 振動解析・電流解析・AI異常検知。

3. 設備診断の基本プロセス

  1. 測定・観察: 温度・振動・電流・音・油質などを測定。
  2. データ解析: トレンド化・統計分析・AI解析で異常傾向を抽出。
  3. 評価・判定: 正常・注意・異常の3段階で状態を評価。
  4. 改善・記録: 整備・部品交換を実施し、履歴を管理。

このプロセスを継続的に回すことで、診断精度と判断スピードが向上します。

4. 代表的な診断手法

診断手法 測定対象 代表的ツール
振動診断 回転機(モータ・ポンプ) 振動計、FFTアナライザ
電流・電圧解析 モータ・制御盤 クランプメータ、MCSA診断装置
熱診断 電気機器・配管 赤外線サーモグラフィカメラ
超音波診断 空圧・真空ライン、ベアリング 超音波探傷器、リークディテクタ
油・冷却水分析 油圧ユニット、チラー 油劣化チェッカ、水質計

5. IoT・AIによる診断の進化

近年では、測定データをクラウドに集約し、AIが自動解析する仕組みが普及しています。

設備状態監視クラウドAI異常検知ソフトを活用することで、“人の経験に頼らない診断”が現実のものとなっています。

6. 診断結果の活かし方

  • 診断結果をCMMSへ連携し、保全計画へ反映
  • 定期的にデータを比較し、設備ごとの劣化傾向を可視化
  • 異常傾向を教育・マニュアルに反映し、再発防止

7. 設備診断を成功させるポイント

  • 「目的」と「判断基準」を明確にしてから測定を始める
  • 単発測定ではなく、継続データで傾向を捉える
  • ツールは「扱いやすさ」「再現性」「記録性」で選定
  • 診断結果を組織的に共有し、改善につなげる

まとめ

設備診断は、単なる点検作業ではなく、工場の信頼性を支える戦略的活動です。

IoT・AIツールを活用しながら、データに基づいた判断を積み重ねることで、「止まらない設備」「見える保全」「学ぶ組織」を実現できます。

まずは対象設備を絞り、継続的にデータを集めることから始めましょう。



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