設備診断や点検を行ったあと、「結果をどうまとめるか」は非常に重要です。
どれだけ精度の高い測定をしても、報告書が不十分だと正しい判断や改善ができません。
本記事では、診断結果を正しく伝え、組織で共有・活用するための報告書・管理帳票の作り方を解説します。
1. 設備診断報告書の目的
診断報告書は「記録」だけでなく、次の行動(修理・改善・再発防止)につなげるための情報ツールです。
報告書の役割
- 現場作業者と管理者の情報共有
- 設備の劣化傾向・異常傾向の記録
- 保全計画(周期・部品交換)の見直し
- 経営層への設備投資判断資料
2. 基本構成と項目
一般的な設備診断報告書は、以下の構成でまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ① 基本情報 | 設備名、型式、設置場所、点検日、担当者 |
| ② 診断目的 | 定期点検/異常発生後の追跡/更新判断など |
| ③ 測定・観察結果 | 温度、振動、電流、油質などのデータ(グラフ化推奨) |
| ④ 判定・評価 | 正常/注意/異常の3段階+コメント |
| ⑤ 原因分析 | 推定原因、再発リスク、補足データ |
| ⑥ 対応・処置内容 | 応急対応、交換・修理内容、作業者名 |
| ⑦ 改善提案 | 再発防止策、周期見直し、追加診断提案 |
| ⑧ 添付資料 | 写真、サーモ画像、グラフ、測定ログ |
3. 記載のポイント
- 定量化:温度・振動・電流などを数値で記録
- 時系列:前回データと比較し、劣化傾向を明記
- 写真添付:異常箇所は視覚的に示す
- 簡潔なコメント:「〜の傾向あり」「交換推奨」など明確に
4. グラフ・可視化のコツ
診断データは、グラフ化すると非常に伝わりやすくなります。
- 振動トレンドグラフ(過去6回分の比較)
- 温度推移グラフ(稼働率と相関)
- 異常頻度ヒートマップ(設備別)
設備状態監視クラウドを導入すれば、自動グラフ化・共有が可能です。
5. 管理帳票の種類と活用法
設備診断の運用では、複数の帳票を組み合わせると効果的です。
| 帳票名 | 目的 | 活用ポイント |
|---|---|---|
| 診断結果一覧表 | 全設備の結果を一括管理 | 異常傾向を俯瞰して把握 |
| 点検・修理履歴表 | 各設備の保全履歴管理 | 劣化トレンド分析に活用 |
| 改善提案リスト | 再発防止・提案内容の記録 | PDCAサイクルに直結 |
| 部品在庫台帳 | 交換部品の在庫・発注管理 | CMMSと連携で効率化 |
6. クラウド化・デジタル化のすすめ
従来のExcelや紙帳票では、検索・共有・分析に限界があります。
点検・報告クラウドツールを活用すれば、報告書や帳票をクラウド上で自動生成・保存でき、管理者や他拠点と即時共有が可能です。
7. 記録の継続と改善サイクル
- 報告書のフォーマットを統一し、誰でも同じ基準で作成
- 記録データを分析して改善活動へフィードバック
- 異常傾向をPDCAサイクルに反映(点検頻度・基準見直し)
- 教育資料として再活用し、技術継承を促進
まとめ
設備診断報告書・帳票は、単なる記録ではなく「改善の出発点」です。
見やすく、比較しやすく、共有しやすいフォーマットで運用することで、“現場の知見が生きる保全”が実現します。
まずはテンプレートを整備し、クラウドやCMMSと連携させながら、報告業務をデジタル化していきましょう。







