空圧アクチュエータ(pneumatic actuator)は、圧縮空気の力を使って「直線運動」や「回転運動」を行う装置の総称です。
代表例としてエアシリンダがよく知られていますが、実際にはロッドレスシリンダやロータリアクチュエータ、空圧グリッパなど、さまざまな種類が存在します。
この記事では、空圧アクチュエータの基本、直動・回転アクチュエータの種類、エアシリンダとの関係、用途別の選び方を整理して解説します。
空圧アクチュエータとは?
空圧アクチュエータは、圧縮空気の圧力エネルギーを機械的な動きに変換する装置です。
- 圧縮空気 → ピストンやベーンに力として作用
- その力を利用して「押す・引く・回す・つかむ」などの動きに変換
- 搬送ライン・組立機・クランプ治具・ロボットなどで広く利用
空圧アクチュエータは大きく分けて次の2系統があります。
- 直動アクチュエータ(直線運動)
- 回転アクチュエータ(回転運動)
直動空圧アクチュエータの種類
エアシリンダ(標準シリンダ)
最も一般的な直動アクチュエータで、ピストンの往復運動により直線運動を行うタイプです。
- 片ロッド複動シリンダ:押し・戻しとも空気圧で駆動
- 片ロッド単動シリンダ:押しのみ空気圧、戻りはバネまたは自重
用途例:
- ワークの押し出し・押さえ
- ストッパ・位置決め機構
- 軽量ワークの搬送
ロッドレスシリンダ
ロッドが外に突出せず、シリンダチューブに沿ってスライダが移動する構造です。
- 長ストロークでも全長を短くできる(省スペース)
- コンベヤの搬送・スライドテーブルなどに使用
スライドシリンダ/ガイド付シリンダ
シリンダと一体のガイド機構を持ち、横荷重に強い直動アクチュエータです。
- ワークを押す・位置決めする工程に最適
- 加工・検査工程のワーク搬送・ストッパに多用
クランプシリンダ
ワークをクランプ(押さえつけ)することに特化した直動アクチュエータです。
- 加工・溶接・組立治具のクランプ機構
- 省スペースで高いクランプ力を実現
回転空圧アクチュエータの種類
ロータリアクチュエータ
圧縮空気で一定角度または複数回転の回転運動を行うアクチュエータです。
- ラック&ピニオン式、ベーン式などがある
- 回転テーブルの駆動、回転クランプ、バルブ開閉などに利用
空圧グリッパ
指状のジョーを開閉してワークをつかむアクチュエータです。
- ロボットハンドの把持部として使用
- 機械加工品・部品トレイなどの把持・搬送に利用
エアモータ
圧縮空気で駆動するモータで、連続回転を行う回転アクチュエータです。
- 防爆性が求められる環境で有利
- エアツール(エアドリル・エアグラインダなど)の駆動源
エアシリンダは空圧アクチュエータの一種
整理すると、次のような包含関係になります。
- 空圧アクチュエータ(総称)
- 直動アクチュエータ:エアシリンダ、ロッドレスシリンダ、スライドシリンダ、クランプシリンダ など
- 回転アクチュエータ:ロータリアクチュエータ、エアモータ、空圧グリッパ など
つまり、エアシリンダは「直動形の空圧アクチュエータ」の代表例であり、
「空圧アクチュエータ=エアシリンダ」とは言えません。
空圧アクチュエータの選定ポイント
1. 必要な動きの種類(直動/回転)
- 直線的に押す・引く → 直動アクチュエータ(エアシリンダ等)
- 一定角度の回転・クランプ回転 → ロータリアクチュエータ
- 連続回転 → エアモータ
2. 必要推力・トルク
直動の場合、シリンダ推力は概ね以下で算出します。
推力[N] ≒ 使用圧力[MPa] × 有効断面積[mm²] ÷ 100
- ワーク重量+摩擦+加速分を含めて計算
- 安全率(1.3〜2倍程度)を見てボア径を決定
回転の場合は、必要トルク[N・m]と角度を基準に選定します。
3. ストローク・回転角
- 長ストローク → ロッドレスシリンダの検討
- 90°/180°回転 → ロータリアクチュエータ(ラック&ピニオン式など)
4. 動作速度と衝撃
- 高速動作ではショックアブソーバ・クッション機構が重要
- スピードコントローラで加減速を調整
5. 使用環境・エア品質
- 粉じん・水滴・スパッタ → カバー・ブーツ・耐熱仕様を検討
- クリーンルーム → 無給油・ステンレス仕様など
- エアドライヤ・フィルタ・レギュレータによる圧縮空気の品質確保
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まとめ
空圧アクチュエータは、圧縮空気を使って「押す・引く・回す・つかむ」といった動作を行う装置の総称です。
- エアシリンダは「直動空圧アクチュエータ」の代表例であり、空圧アクチュエータ全体の一部に過ぎない
- 直動・回転・把持など、必要とする動きによってアクチュエータの種類を選ぶ
- 推力・トルク・ストローク・環境・エア品質を考慮して機種を決めることが重要
用途に応じて空圧アクチュエータとエアシリンダを正しく使い分けることで、自動機の信頼性と生産性を高めることができます。












