可搬重量(ペイロード / Payload)とは、産業用ロボットが安全かつ安定して持ち上げ・運搬・操作できる最大重量のことです。
ハンド・チャック・エンドエフェクタの質量も含むため、「ワーク重量=可搬重量」ではない点に注意が必要です。
この記事では、可搬重量の正しい定義、計算方法、ロボット選定のポイントをわかりやすく解説します。
可搬重量(ペイロード)とは?
可搬重量とは、ロボットが持てる最大の総重量を示す数値です。
可搬重量に含まれるもの:
- ワーク(製品)の重量
- ハンド・チャックの重量
- 治具・爪などの付帯パーツ重量
- 配線・エアホース・センサ類の重さ
例:
ロボットの可搬重量 10kg の場合
→ ワーク 7kg + ハンド 2kg + センサケーブル 1kg = **合計10kg**
可搬重量を超えるとどうなる?
- 動作精度の低下(位置ズレが発生)
- サーボ過負荷(アラーム停止)
- 減速機・ベアリング寿命の低下
- 振動増加・動作不安定
可搬重量は「余裕をもって選定する」ことが必須です。
可搬重量の計算方法
正確には以下を合算します。
可搬重量 = ワーク重量 + ハンド重量 + 付帯パーツ重量
さらに重要なのは「イナーシャ(慣性モーメント)」です。
重量が軽くても、ワーク形状が大きいとモーメントが増え、ロボットに大きな負荷がかかります。
可搬重量に余裕を持たせる理由
一般的には80%以下で使うのが推奨とされています。
例:
可搬重量 20kg のロボットに
合計重量 18kg を載せる → 使用率 90% → 過負荷リスク増加
合計重量 15kg → 使用率 75% → 安定動作
可搬重量別・ロボットの用途例
| 可搬重量 | 代表用途 |
|---|---|
| 〜3kg | 小型組立、電子部品搬送、検査工程 |
| 3〜10kg | 食品・医薬包装、小物ピッキング |
| 10〜20kg | 加工機へのワーク投入、汎用搬送 |
| 20〜50kg | 金属部品搬送、工程間搬送 |
| 50kg〜 | 溶接ロボット、重量物搬送、パレタイジング |
ロボット選定のポイント
① 実重量と可搬重量のバランス
- 総重量は可搬重量の70〜80%以内が推奨
- 治具重量の見落としに注意
② イナーシャ(慣性モーメント)
ワークが長い・偏っているほど動作が不安定になるため、メーカーの「イナーシャ制限値」で確認。
③ 作業範囲(リーチ)
ロボットの動作可能範囲(XYZの広さ)を満たす必要があります。
④ サイクルタイム(速度)
搬送速度が速いほど負荷が増える → 余裕のある可搬重量が必要。
⑤ 周辺設備との干渉
安全柵、コンベア、架台との干渉を避けるレイアウトが重要です。
関連記事
関連書籍
まとめ
可搬重量は、「ロボットが安全に扱える総重量」であり、ワークだけでなくハンド・治具の重量も含まれます。
- 可搬重量は総重量の“80%以内”が安全
- ワーク重量よりイナーシャの方が重要なことも多い
- 用途別に適した可搬重量帯がある
- ロボット選定は可搬重量・リーチ・サイクルタイムのバランスが重要
適切なロボット選定により、設備の安定稼働・寿命延長・サイクルタイム改善が期待できます。












