軸シール(シャフトシール)は、モーターやポンプ、減速機などの回転軸部分から油・水・異物が漏れないようにする密封部品です。
最も一般的なものが「オイルシール」であり、多くの回転機械に採用されていますが、用途や要求性能によって種類や構造は大きく異なります。
この記事では、軸シールの役割、オイルシールとの違い、種類、選定ポイントをわかりやすく解説します。
軸シールとは?
軸シールは、回転軸が出入りする部分に取り付けられる密封(シール)用部品で、以下の役割を持ちます。
- 内部の潤滑油を漏らさない
- 外部の水・粉じん・異物が侵入するのを防ぐ
- 摩擦熱・摩耗を抑えて機械寿命を延ばす
- 回転軸とハウジングの隙間を適正に保つ
ポンプ、ギヤモーター、ブロワ、コンプレッサなど、ほぼすべての回転機器に採用されています。
オイルシールとは?軸シールとの違い
結論として:
オイルシールは「軸シールの一種」であり、最も一般的な密封部品
軸シール = 広い分類
- オイルシール(一般用途)
- メカニカルシール(高圧・高温向け)
- ラビリンスシール(非接触型)
- パッキンシール
など多数の種類があります。
オイルシールの特徴
- リップ(弾性ゴム)で軸と密着して油を封じる
- 安価で交換しやすい
- 低圧〜中圧・中速回転に向く
オイルシールが不向きなケース
- 高圧(〜0.03MPa以上)
- 高温環境
- スラリー・薬品・高速回転
このような場合は、メカニカルシールや非接触型シールを採用します。
軸シールの代表的な種類
① オイルシール(接触型)
最も普及している軸シール。一般機械の標準品。
・素材:NBR、FKM(バイトン)、シリコン等
・用途:ギヤボックス、モーター、シリンダ、ポンプ
② メカニカルシール(メカシール)
硬質の摩擦面を押し当てて密封する構造。
高圧・高温・腐食液に最適。
用途:ケミカルポンプ、産業用ポンプ、給水ポンプ
③ ラビリンスシール(非接触)
軸とハウジングの溝構造で「迷路」を作る非接触型シール。
特徴:
- 摩擦ゼロ → 長寿命
- 高速回転に最適
- 油の飛散を抑える
④ パッキンシール
リング状のパッキンを圧縮し密封する方式。
ポンプ・攪拌機・バルブで使用される。
軸シールの構造(オイルシールの場合)
| 部分 | 役割 |
|---|---|
| リップ | 軸と密着し油の漏れを防ぐ |
| ガータスプリング | リップの接触圧を安定させる |
| 金属リング | 外周を保持し変形を防ぐ |
| 外周ゴム | ハウジングとの密着を確保 |
軸シールの選定ポイント
① 使用流体(油・水・薬品)
流体によってゴム材質が変わります。
- NBR:一般油
- FKM(バイトン):高温・薬品
- EPDM:水・蒸気
- PTFE:薬品、スラリー、高速用
② 温度
高温ほど耐熱材料が必要。
③ 圧力
オイルシールは低圧向け。中〜高圧はメカシール推奨。
④ 回転速度
- 高速回転 → 非接触型(ラビリンス)
- 中速 → オイルシール
- 低速 → パッキンなども可
⑤ 軸の仕上げ・偏心
- 軸表面粗さ
- 偏心量
- 振れ
これらが過大だと漏れの原因に。
軸シールの不具合と原因
- 油漏れ:リップ摩耗・軸傷・偏心
- 異音:潤滑不足・軸とリップの焼き付き
- 過熱:摩擦大、取付ミス
- 早期破損:材質不適合・過速度・高圧
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まとめ
軸シールは、回転機械の油漏れ防止・異物侵入防止に欠かせない重要部品です。
- オイルシールは軸シールの一種であり最も一般的
- 高圧・高温・薬品用途ではメカシールやPTFEが有効
- 回転速度・温度・流体・偏心などで最適材質が異なる
- 摩耗や軸傷による漏れトラブルが多いため定期点検が重要
適切なシール選定と保全により、設備の信頼性・安全性を大きく向上させることができます。












