クーラント(coolant)とは、工作機械や加工工程で使用される切削液・冷却液の総称です。
加工中に発生する熱を冷ますだけでなく、潤滑・防錆・切粉排出など多くの役割を担います。しかし、適切に管理しないと腐敗・臭気・サビ・加工不良などの原因になります。
この記事では、クーラントの種類、劣化要因、管理方法を現場目線でわかりやすく解説します。
クーラントとは?
クーラントは、切削や研削などの加工時に使用される冷却・潤滑液です。
加工による発熱や摩耗を抑え、生産性と工具寿命を向上させる目的で使用されます。
主な役割:
- 冷却:工具・ワークの温度上昇を抑える
- 潤滑:摩擦を減らし、加工精度を安定
- 切粉排出:切り屑を洗い流し、表面品質を改善
- 防錆:ワーク・機械を錆から保護
- 発煙・焼け防止:研削加工などで特に重要
クーラントの種類
① 水溶性切削液(ソリューブル/エマルジョン)
水で希釈して使用するタイプ。
- 冷却性能が高い
- コストが低い
- 鉄系の切削に向く
- 腐敗対策が必要(定期補給・清掃)
② 不水溶性切削油(ストレート油)
原液で使用する油。
- 潤滑性に優れる
- 難削材や高精度加工に向く
- 油煙・発火リスクに注意
③ 合成切削液
油分をほとんど含まないタイプ。
- 清浄性が高い(透明)
- アルミなど軽金属に適する
- 防錆性は添加剤で調整
④ セミシンセティック(半合成)
水溶性と合成の中間タイプ。
- 冷却性と潤滑性のバランスが良い
- 幅広い材質に対応
クーラントの劣化要因
① バクテリア繁殖(腐敗)
水溶性クーラントは特に腐りやすく、臭気の主原因。
要因:
- 切粉の蓄積
- 油分の混入
- pH低下
- 濃度管理不良
② 油分混入(トランポ油)
スライド油・切粉油が混ざると、腐敗・泡立ち・濃度低下につながる。
③ pH の低下
腐敗や防錆性能低下を招くため、定期チェックが必須。
④ 濃度低下
希釈しすぎると、防錆性・潤滑性が落ち加工不良の原因に。
クーラント管理のポイント
① 濃度管理(最重要)
メーカー推奨濃度を維持することが基本。
例:5〜10%など(用途による)
濃度計(屈折計)で定期測定します。
② pH管理
通常は pH 8〜9 程度が良好。
pH低下 → 腐敗のサイン。
③ 切粉・スラッジの除去
定期的なタンク清掃やネットフィルタ、セパレータで対策。
④ 液の撹拌・循環
止めたままだと腐敗スピードが加速するため、できるだけ循環させる。
⑤ トランポ油の除去
油膜分離機(スキマー)で除去すると品質が長持ち。
よくあるトラブルと対策
- 悪臭: → 腐敗。濃度・pH・切粉堆積をチェック
- 泡立ち: → 油混入 or ポンプ空気噛み
- 錆発生: → 濃度不足 or pH低下
- 加工面の悪化: → 液劣化または潤滑不足
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まとめ
クーラントは、加工精度・工具寿命・作業環境に関わる重要な液体です。
- 水溶性・不水溶性・合成など用途に応じて選ぶ
- 劣化要因は「濃度低下」「pH低下」「油混入」「切粉残り」
- 管理の基本は濃度・pH・清掃・油分除去
- 定期管理で品質が安定し、加工トラブルを防げる












