キーの押し込み量とは、軸と穴(ハブ)に取り付けるキーをどの程度まで挿入するかを示す実務上の重要なパラメータです。
押し込み量が不適切だと、キーの浮き・破損・ハブの割れ・ガタ発生など、回転体の重大トラブルにつながります。
この記事では、キー押し込み量の基本、適正値、JISの考え方、実務での注意点、トラブル原因をわかりやすく解説します。
キーの押し込み量とは?
キー押し込み量は、キーを軸のキー溝(キーシート)とハブのキー溝にどこまで挿入するかを示す値です。
一般に押し込み量は:
- キーの全長に対する挿入割合
- 軸方向の突出量(出っ張り)
の2つで管理されます。
基本ルール
キーはハブの幅方向に対して“ほぼ全長が挿入されている”ことが理想
ただし、キーが軸からはみ出したり、過度に押し込むとトラブルになります。
キー押し込み量の適正値(実務目安)
① 軸方向の押し込み量(一般値)
| 項目 | 推奨値 |
|---|---|
| キーの挿入長 | キー全長の90〜100% |
| 突出量(はみ出し) | 0〜0.5mm以内 |
| 奥側の余裕 | 0〜0.2mm(密着不可) |
密着させすぎると、温度変化で伸びた際に割れの原因になります。
② JIS規格での考え方
キーの公差は JIS B 1301、JIS B 1302 で規定されています。
ポイントは:
- キーは「軽圧入」または「すべり嵌め」を想定
- “押し込みすぎ”も“ゆるすぎ”もNG
- ハブ溝との隙間は適正クリアランスを保つ
押し込み量が不適切な場合に起きるトラブル
① 押し込み不足(浅い)
- キーが浮き上がり、ガタ発生
- 衝撃力でキーがせん断破壊
- カップリングやプーリの偏心
② 押し込みすぎ(深い)
- ハブ端部が割れる(最も多い)
- 密着しすぎて取り外し不可
- 温度上昇で膨張 → 更に圧迫 → 固着
適正なキー押し込みを行うポイント
- ハブ側キー溝の奥に 0.1〜0.3mm の逃げをつくる
- キー端面とハブ端面をそろえる(突出させない)
- 試し挿入して「軽圧入」になっているか確認
- ハンマーで叩き込みすぎない(変形の原因)
- 組付け後、回転させてガタがないか確認
キー押し込みに関連する機械要素
- キー溝(キーシート):精度が悪いと押し込み量が安定しない
- テーパーロックプーリ:押し込み管理がより正確に必要
- フレキシブルカップリング:キーの突出はミスアライメントを増加させる
関連記事
関連書籍
まとめ
キー押し込み量は、回転機械の寿命や信頼性に直接関わる重要ポイントです。
- キー挿入は全長の90〜100%が目安
- 突出量は 0〜0.5mm 程度
- 押し込みすぎはハブ破損の原因
- 組付け後のガタ・偏心チェックが重要
正しい押し込み量を理解することで、装置トラブルを大幅に減らすことができます。












