フレキシブルカップリングは、モータと負荷機器(ポンプ・減速機・送り装置など)をつなぐ際に、芯ズレ(ミスアライメント)を吸収する機械要素です。
ただし「どれだけズレを許容できるか」は種類によって大きく異なり、誤った使用は振動・異音・ベアリング破損の原因になります。
この記事では、フレキシブルカップリングの種類、許容ミスアライメント、選び方のポイントをわかりやすく解説します。
ミスアライメントとは?
ミスアライメントとは、2本の軸が正しい位置関係からずれている状態のことです。
ズレの種類は次の3つに分類されます。
- 平行ミスアライメント(オフセット)
- 角度ミスアライメント(アンギュラ)
- 軸方向変位(エンドプレイ)
これらを完全に吸収できるカップリングは存在しないため、許容範囲内で使うことが重要です。
フレキシブルカップリングの種類と許容ミスアライメント
① ジョー(クロー)カップリング
エラストマー(ゴム)で振動を吸収する代表的タイプ。
| ミスアライメント種類 | 許容値の目安 |
|---|---|
| 平行 | 0.2〜0.5mm |
| 角度 | 1°前後 |
| 軸方向 | ±1mm程度 |
特徴:安価・汎用・緩衝性がある
注意:ゴムの劣化で性能低下が早い
② ディスクカップリング
金属ディスクの弾性でズレを吸収する高精度タイプ。
| 平行 | 0.1〜0.3mm |
|---|---|
| 角度 | 0.5°前後 |
| 軸方向 | ±0.5mm程度 |
特徴:高精度・バックラッシゼロ
注意:過大ミスアライメントに弱い(破損リスク)
③ ベローズカップリング
蛇腹状の金属ベローズで柔軟性を確保。
| 平行 | 0.1〜0.2mm |
|---|---|
| 角度 | 1°程度 |
| 軸方向 | ±0.3〜1mm |
特徴:高剛性・応答性が高い
注意:衝撃荷重に弱い
④ オルダムカップリング
中間ディスクがスライドしてズレを吸収。
| 平行 | 0.3〜0.6mm |
|---|---|
| 角度 | 1°前後 |
| 軸方向 | 小さめ(±0.1〜0.2mm) |
特徴:平行ズレに非常に強い
注意:高トルク用途には不向き
ミスアライメント許容値の読み方
仕様書には通常、以下の3項目が記載されています。
- Parallel Misalignment(平行)
- Angular Misalignment(角度)
- Axial Misalignment(軸方向)
3項目の同時許容は非線形で、単独時よりも低下する点に注意が必要です。
許容ミスアライメントを超えると発生するトラブル
- 振動増加
- ベアリングの偏摩耗
- カップリング部の異音
- 軸たわみ・ランアウト増大
- シール摩耗 → 漏れの発生
最も多い原因は「芯出し不足」です。
実務でのミスアライメント対策
- 芯出し(アライメント調整)を適正に行う
- ミスアライメント許容量の大きいカップリングを選ぶ
- 軸方向変位が大きい装置ではディスクよりジョー型
- 高速・高精度用途ではベローズ・ディスク型
- 中間ディスクの摩耗状態を定期点検する
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まとめ
フレキシブルカップリングは芯ズレを吸収しますが、「万能ではない」点が重要です。
- ミスアライメントには平行・角度・軸方向の3種類
- カップリングの種類ごとに許容値が大きく異なる
- 許容量を超えると振動・摩耗・破損が発生
- 最重要ポイントは芯出しの精度
許容ミスアライメントを理解すると、カップリング選定と保全の品質が大きく向上します。












