力率改善(Power Factor Improvement)とは、電力の無駄を減らし、効率よく電気を使うための技術です。
工場では「電力料金の削減」「設備の発熱低減」「トランス負荷の軽減」のため、非常に重要な保全項目となっています。
この記事では、力率とは何か、改善する理由、コンデンサによる改善方法まで分かりやすく解説します。
力率とは?
力率(Power Factor)とは、使った電力のうち仕事(有効電力)に使われた割合のことです。
式で表すと次の通りです。
力率 = 有効電力(kW) ÷ 皮相電力(kVA)
- 力率が高い(0.95〜1.00) → 電気を効率よく使えている
- 力率が低い(0.5〜0.7) → 無駄な電流が多い
工場ではモータが多く使用されるため、力率が低下しやすい特徴があります。
力率が低いと何が問題か?
① 電力料金が上がる(基本料金の増加)
電力会社の「力率割引・割増」制度により、力率が悪いと基本料金が高くなる仕組みになっています。
② トランス・配線が余計に発熱する
無効電流が増えるため、配電設備に負荷がかかる。
③ 設備容量を圧迫する
同じkWを使うのに、より多くのkVAを消費するため、容量不足を起こしやすい。
④ インバータ・モータの効率が低下する
電源の品質が悪化し、過熱・効率低下につながる。
力率が悪くなる原因
① 誘導性負荷(モータ・トランス)が多い
工場ではこれが最大の原因。
② インバータ・スイッチング電源
高調波や進み力率の原因になることも。
③ 過負荷運転
モータが重い負荷を引くと力率が低下。
④ 配線が長い
電圧降下によって力率が悪化する。
力率改善の方法
① 進相コンデンサ
最も一般的。
モータの遅れ無効電力を相殺し、力率を改善する。
- 低圧進相コンデンサ(AC200V系)
- 高圧進相コンデンサ(AC400〜600V系)
② 自動力率調整器(APFC)
負荷変動が大きい工場で使用される方式。
必要な容量のコンデンサを自動投入する。
③ インバータ化による改善
インバータはモータの磁化電流を抑えられるため、ベルト駆動などをインバータ化すると自然に力率が上がる場合がある。
④ 配線の太径化
電圧降下対策として有効。
力率改善の効果
- 基本料金の削減(年間数十万円規模も)
- トランス負荷の低減
- 配線・ブレーカが過熱しにくくなる
- モータの起動性・効率向上
- 設備の寿命延長
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まとめ
力率改善は、工場の電気効率を高めるために欠かせない重要な対策です。
- 力率=有効電力 ÷ 皮相電力
- 力率が低いと電力料金が上がる
- 進相コンデンサが最も一般的な改善方法
- 設備負荷や電源品質が向上するメリットも大きい
工場の電力コストを下げる効果が非常に高いため、保全担当者にとって必須の知識です。












