過励磁(かれいじ / Over Excitation)とは、モータに流れる磁化電流が必要以上に大きくなり、コア損・発熱・振動などの異常を引き起こす現象です。
特に産業用モータ・インバータ運転では重要な保全ポイントで、故障や焼損につながる原因にもなります。
この記事では、過励磁の仕組み、原因、起きたときの症状、対策まで初心者にも分かりやすく解説します。
過励磁とは?
過励磁とは、モータや変圧器の鉄心にかかる磁束が必要以上に増えてしまい、磁気飽和を起こすことで発熱・異音・電流増加などの異常をもたらす現象です。
磁束が多くなりすぎる → 鉄心が飽和 → 電流が急増
という流れで異常が発生します。
過励磁で起きる現象
- モータ電流が異常に増える
- 本体が熱くなる(温度上昇)
- 「ブーン」という異音・振動
- トルク低下 → 過負荷停止
- 最悪はコイル焼損
なぜ過励磁が起こるのか?(原因)
① 電圧が高く印加されている(過電圧)
モータは「V/f比」で磁束が決まるため、電圧だけ高いと磁束が過剰になる。
② 周波数が低い状態で高電圧をかけている
インバータ制御で最も多い例。
低周波のときに電圧を上げすぎると、磁束が増え過ぎて過励磁となる。
③ V/f補正の設定ミス
V/f制御モードでのパラメータ誤り。
④ 巻線の異常・絶縁劣化
内部異常によって励磁電流が過大になる場合。
⑤ 電源品質が悪い(高調波・電圧変動)
不安定な電源環境でも過励磁を起こしやすい。
過励磁が起きたときの症状
- インバータの過電流(OC)アラーム
- モータがうなるような音を出す
- 異常に熱くなる(触れないレベル)
- 回転が不安定
- 負荷が軽いのに電流値が高い
これらの症状が出た場合は、早急に点検が必要です。
過励磁の対策
① V/f比を適正化する
インバータ運転では、V(電圧)とf(周波数)の比率を正しく設定することが重要。
② 過電圧対策(入力電源の確認)
- 電源電圧の測定(高すぎないか)
- トランスのタップ調整
③ ベクトル制御を使用する
高精度なベクトル制御は励磁電流を適正化し、過励磁を防止できる。
④ モータの負荷状態を改善
- 機械側の固着・摩耗を確認
- ベルト・ギアの調整
⑤ 温度監視の強化
温度センサ(PTC・PT100)で焼損予防。
⑥ 高調波対策
必要に応じてフィルタを導入。
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まとめ
過励磁は、モータの磁束が増えすぎることで発生し、発熱・電流増加・振動などの大きなトラブルにつながります。
- V/f比の不適正が最も多い原因
- インバータ設定を見直すことで改善可能
- モータの発熱・異音は要注意
- 電源品質や負荷状態の異常も確認する
適切な制御設定と電源管理により、過励磁は確実に防ぐことができます。












