機械の摺動部で「ガタガタ」「ビビリ」「引っかかるような動き」が発生することがあります。
この現象の代表例が “スティックスリップ(stick-slip)” です。
低速送りや位置決め動作で特に問題となり、精度不良・摩耗・異音など様々なトラブルを引き起こします。
この記事では、スティックスリップの仕組み、原因、発生しやすい場所、具体的な対策をわかりやすく解説します。
スティックスリップとは?
スティックスリップとは、摺動面が「止まる(stick)」→「急に滑る(slip)」という動作を繰り返すことで発生する振動現象です。
低速で動き始めたときに、摩擦力の変動が原因で動きがカクつき、
- ガタガタする
- 急に滑るように動く
- 位置決め精度が安定しない
といった症状を引き起こします。
発生の仕組み(静摩擦と動摩擦の関係)
スティックスリップは、
静摩擦力 > 動摩擦力
であることが主な原因です。
ゆっくり押すと止まったまま(stick)ですが、一定以上の力が加わると急に動き出し(slip)、摩擦力が低下して大きく滑ります。
その後また静摩擦状態に戻り、これが連続することで振動が発生します。
スティックスリップが起きやすい場所
- リニアガイド・スライドガイド
- 油圧/空圧シリンダの低速動作
- 摺動ブッシュ・案内面
- ねじ送り装置(ボールねじを使わない場合)
- 樹脂・ゴムの接触部
特に「低速動作」が重要ポイントです。
スティックスリップの原因
① 潤滑不良(最も多い)
油量不足、油切れ、油の劣化など。
② 摩擦係数の急変
材料組み合わせが悪かったり、表面粗さが不適正な場合。
③ 荷重が偏っている
ガイドの片当たりや組付け不良。
④ 低速での不安定な制御
サーボモータのゲイン設定やPWM制御が不適正。
⑤ 表面粗さが粗い/不均一
油膜形成が安定せず、stick状態が長くなる。
スティックスリップの対策
① 潤滑の改善
- 適正粘度の潤滑油を使用
- 油量の確保
- グリース → オイルへの変更
- 固体潤滑剤の使用(モリブデン、PTFEなど)
② 材料・表面の改善
- 表面粗さの均一化(仕上げ加工)
- 摺動材質を変更(青銅・PTFE・樹脂系など)
③ 構造的な改善
- 荷重のバランス調整
- 予圧を適正化する
④ 制御設定の改善
(サーボ・油圧・空圧など)
- 低速ゲイン調整
- 立ち上がり速度の変更
- 微小振動(ダザリング)による油膜維持
スティックスリップが引き起こすトラブル
- 位置決め精度の悪化
- 振動・騒音の増加
- 摩耗の加速
- 作業品質の低下
放置すると寿命の低下につながるため、早期対応が重要です。
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まとめ
スティックスリップは、摺動部の摩擦力変動により動作が不安定になる現象です。
- 静摩擦>動摩擦 が根本原因
- 潤滑不良・表面粗さ・荷重偏りで発生しやすい
- 低速動作の位置決め精度に特に影響
- 潤滑改善・材料変更・制御調整で対策可能
摺動機構の安定性を確保するためにも、早期発見と対策が重要です。












