応力集中(Stress Concentration)とは、**形状の段差・穴・溝などが原因で、局所的に応力が大きくなる現象**のことです。
軸の折損、クラック発生、疲労破壊など、多くの機械トラブルの“出発点”となるため、設計・保全において最も重要な概念の一つです。
この記事では、応力集中の起こる理由、危険箇所、低減方法をわかりやすく解説します。
応力集中とは?
応力集中とは、
構造物の特定部分に応力が偏って大きくなり、破損の起点となる現象
のことです。
部品の形状や荷重条件が不均一な場合に起きやすく、疲労破壊の原因の多くが応力集中に起因します。
応力集中が起こりやすい箇所
- 段付き軸の肩部分
- キー溝(キーシート)の角部
- 穴(ボルト穴・貫通穴)周辺
- 溝付きのシャフト(スプライン・スナップリング溝)
- 急激な断面変化部
- 溶接部の端部
特に回転軸では「キー溝」と「段差部」が最も危険です。
応力集中係数 Kt とは?
応力集中の影響は「応力集中係数 Kt」で表します。
Kt = 応力集中部の最大応力 ÷ 公称応力
例:
Kt = 2 の場合
→ 応力が2倍に増幅されていることを意味する。
段差があるだけで応力は数倍になる場合があります。
応力集中によるトラブル例
- 軸の折損
- キー溝からの疲労亀裂
- 穴周辺のクラック
- ボルトの根元折れ
- ギア歯元の亀裂
疲労破壊は「小さな応力」でも、繰り返すことで進行し、最終的に破損します。
応力集中を低減する方法
① フィレット(R面)をつける
段差に滑らかな曲率をつけると応力集中が大幅に減少。
② 急激な断面変化を避ける
軸径変更は段階的に行う。
③ キー溝の角部をR処理する
鋭角はクラックの発生源。
④ 表面処理(研磨・ショットピーニング)
表面仕上げが良いほど疲労強度が向上。
⑤ 余裕ある寸法設計
荷重に対して軸径が小さいと応力集中が顕著。
⑥ 材料強度を上げる
高張力鋼や表面硬化材の利用が有効。
応力集中はどんなときに問題になる?
- 高速回転軸
- 往復運動部
- 繰り返し荷重を受ける部品
- 衝撃荷重のかかる構造物
特に回転軸では、応力集中+疲労荷重の組み合わせが最も危険です。
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まとめ
応力集中は、形状の影響によって局所的に応力が大きくなる現象であり、破損・疲労の主要原因です。
- 段差やキー溝は最も危険な応力集中部
- フィレット処理・表面仕上げで低減可能
- 疲労破壊の9割以上は応力集中が関係
- 設計段階での対策が最も効果的
破損を防ぐためには、応力集中の理解と対策が不可欠です。












