疲労限度(Fatigue Limit)とは、**材料が無限に繰り返し荷重を受けても破壊しない最大応力の値**を指します。
機械設計では、回転軸やボルト、スプリング、ギアなどの寿命を左右する極めて重要な指標です。
この記事では、疲労限度の意味、S-N曲線との関係、計算の考え方、向上方法をわかりやすく解説します。
疲労限度とは?
疲労限度とは、
材料が繰り返し荷重に対して破壊しない最大応力値
のことです。
疲労限度以下の応力であれば、理論上は何回荷重を受けても破壊しないとされます(鋼材の場合)。
疲労破壊との違い
疲労破壊は、**小さな応力でも繰り返し与えると破壊する現象**です。
ポイントは:
- 疲労限度を超える応力 → 破壊に至る
- 疲労限度を下回る応力 → 理論上破壊しない
S-N曲線と疲労限度
疲労限度は S-N 曲線(応力S-繰返し回数N)で確認できます。
- Sが大きい → Nが小さく破壊
- Sが小さい → Nが大きくなる
- ある応力値でカーブが水平になる → これが疲労限度
一般的に、鋼材では1,000万回(10⁷回)付近で水平に近づきます。
疲労限度に影響する要因
① 表面粗さ
粗いほどクラックの起点が多く、疲労限度が低下。
② 応力集中
段差・穴・キー溝は特に危険。
③ 材料の強度
高強度材は一般的に疲労限度も高い。
④ 荷重の種類
- 回転曲げ
- 引張圧縮
- ねじり
などで疲労限度が異なる。
⑤ 表面処理
ショットピーニング・浸炭・窒化が疲労強度を向上させる。
実務での疲労限度の考え方
① 許容応力は疲労限度の 1/2〜1/3 が一般的
安全率を確保するため。
② 回転軸では疲労が最も重要
毎回転で曲げ応力が繰り返される。
③ 応力集中係数を必ず考慮する
実際の応力は設計値より大きい。
④ 温度・腐食環境は疲労限度を低下させる
腐食疲労は寿命を激減させる。
疲労限度を向上させる方法
① R面仕上げ・研磨で表面を改善
クラック起点を減らせる。
② 応力集中を避ける設計
段差やキー溝のフィレット処理。
③ 表面硬化処理
- ショットピーニング
- 浸炭
- 窒化
表面の圧縮残留応力が寿命を延長。
④ 適切な材質選定
高強度鋼・ばね鋼など。
⑤ 液体の腐食環境を避ける
腐食疲労対策が重要。
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まとめ
疲労限度は、繰り返し荷重に耐えるために必ず理解すべき重要な材料特性です。
- 疲労限度以下の応力なら理論上破壊しない
- 疲労破壊の多くは応力集中が原因
- 表面仕上げや表面硬化で疲労限度は向上
- 回転軸やボルト設計では最重要パラメータ
疲労を正しく理解することで、機械の安全性と長寿命化が実現します。












