スプリングバック(Springback)とは、**金属を曲げたり成形した後に、弾性力によって形状が部分的に元へ戻る現象**のことです。
板金加工・曲げ加工・プレス加工では必ず発生し、寸法誤差の大きな原因となります。
この記事では、スプリングバックの原因、影響、補正方法をわかりやすく解説します。
スプリングバックとは?
スプリングバックとは、
塑性加工後、弾性変形が回復して形状が戻る現象
を指します。
完全に変形しきっている部分(塑性域)は戻りませんが、弾性域で変形した領域は元の形に戻ろうとするため“戻り”が発生します。
スプリングバックが問題になる加工
- 曲げ加工(板金・パイプ曲げ)
- プレス成形
- 伸びフランジ加工
- 深絞り加工
- ロール成形
特に板金では、曲げ角度の誤差が問題になりやすいです。
なぜスプリングバックが起きるのか?(原因)
スプリングバックは「弾性域」と「塑性域」が混在するために起こります。
① 弾性変形が回復するため
曲げ加工中:
→ 外側は引張、内側は圧縮で変形。
加工後:
→ 弾性部分が元に戻ろうとする。
② 材料強度が高いほど戻りが大きい
ハイテン材やステンレスはスプリングバックが大きい。
③ 板厚が薄いほど戻りやすい
剛性が低く、変形が不均一。
④ 曲げ半径が大きいほど戻りが大きい
緩やかな曲げは弾性変形の影響を受けやすい。
スプリングバックの影響
- 角度誤差(予定より開いた角度になる)
- 寸法不良
- 組立不適合
- 後工程での手直し増加
特に量産では許容できない誤差につながります。
スプリングバックの補正方法
① 過剰曲げ(オーバーベンド)
予定角度より大きく曲げて戻りを見越す。
② 予備曲げ(プリベント)
2段階で変形させる。
③ 曲げ金型の形状最適化
スプリングバックを前提とした金型設計。
④ 材料の選定変更
戻りの小さい材料を採用。
⑤ 曲げ速度・加工条件の調整
応力分布を安定させることで戻り抑制。
⑥ 板厚を厚くする/Rを小さくする
弾性回復の量が減る。
スプリングバックが大きい材料の特徴
- 高張力鋼(ハイテン)
- ステンレス
- アルミ合金
これらは加工硬化しやすく、弾性回復が大きい傾向があります。
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まとめ
スプリングバックは、金属を曲げた際に弾性力が働き、形状が戻る現象です。
- 弾性回復が原因で寸法誤差が出る
- 高強度材・薄板・大きい曲げRで発生しやすい
- オーバーベンドや金型設計で補正可能
- 板金・プレス加工で最重要の現象
加工精度を出すためには、スプリングバックの理解と補正が不可欠です。












