インボリュート歯形(Involute Gear)とは、**現代の歯車のほぼすべてで採用されている歯の形状**です。
歯面形状が特殊で、どんな中心距離でも一定の速度比を保てる特徴があり、精密機械から産業用減速機まで幅広く使われています。
この記事では、インボリュート歯形とは何か、なぜこれほど普及しているのかをわかりやすく解説します。
インボリュート歯形とは?
インボリュート歯形とは、
円の巻き取り線(インボリュート曲線)で形作られた歯車の歯形
のことです。
この曲線によって「一定の速度比で力を伝達できる」ことが最大の特徴です。
インボリュート曲線とは?
インボリュート曲線は、次のようにして作られます。
円周に糸を巻きつけ、その糸をピーンと張ったままほどいていくときに糸の端が描く軌跡
この曲線が歯面形状に使われています。
インボリュート歯形が使われる理由(メリット)
① 中心距離がずれても正常に噛み合う
インボリュート歯形同士の歯車は、少し中心距離が変わっても速度比が変わらないという大きな利点があります。
② 一定の速度比で回転力を伝えられる
回転の滑らかさが向上し、振動が少なくなる。
③ 歯切りが簡単で製造しやすい
ホブ盤・ギアシェーパなどで量産可能。
④ 摩耗しても機能劣化が少ない
歯面が摩耗しても噛合特性が保たれやすい。
インボリュート歯車の専門用語
① 基礎円(Base Circle)
インボリュート曲線が形成される基準の円。
② ピッチ円(Pitch Circle)
歯車の速度比を決める仮想的な円。
③ 圧力角(Pressure Angle)
一般に 20° が標準。
圧力角が大きいと強度が高いが、駆動が重くなる。
インボリュート歯形の欠点
① 歯先干渉が起きることがある
歯数が少ない歯車では、噛み合いの途中で歯がぶつかる。
② バックラッシ管理が必要
遊び量が過大になると騒音・振動が増える。
③ 高速回転では歯面修整が重要
クラウニング・ポリッシングなどが必要な場合も。
インボリュート歯車が使われる代表例
- 減速機(ギアボックス)
- ロボット減速機
- 工作機械の主軸駆動
- 自動車のトランスミッション
- 印刷機・搬送機の駆動
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まとめ
インボリュート歯形は、現代の歯車の標準となる形状であり、機械の安定した動作に欠かせない技術です。
- インボリュート曲線を使った歯形
- 中心距離がずれても速度比が変わらない
- 製造が容易で摩耗に強い
- 産業機械で最も広く使われる歯車方式
歯車の理解には、まずインボリュート歯形の仕組みを押さえることが重要です。












