モーメント荷重(Moment load)とは、物体を回そうとする力(トルク)のことです。
回転軸・シャフト・カップリング・ベアリングなどの機構では、モーメント荷重が過大になると「たわみ・偏摩耗・振動・破損」などの大きなトラブルを引き起こします。
この記事では、モーメント荷重の基礎、計算の考え方、軸への影響、実務での対策までわかりやすく解説します。
モーメント荷重とは?
モーメント荷重は、物体の回転中心から離れた場所に力が加わることで発生します。
モーメント(M)= 力(F) × 距離(L)
例:
- 長いスパナでボルトを回す → モーメントが大きくなる
- 軸の端に重いロータを付ける → 軸に曲げモーメントが発生
- ベルト張力でプーリ軸が引っ張られる → 曲げ+ねじりモーメント
モーメント荷重と回転軸の関係
回転軸は、以下の3種類のモーメントを受けます:
- 曲げモーメント(Bending moment):軸がたわむ
- ねじりモーメント(Torsion):軸がねじれる
- 複合モーメント:曲げ+ねじりの同時作用
特にベルト駆動・ギア駆動・偏心負荷のある装置では、曲げモーメントが問題になります。
モーメント荷重が大きすぎると起きるトラブル
- 軸のたわみ → 振れ(ランアウト)増加
- ベアリングの偏摩耗
- シールの偏摩耗(漏れの原因)
- カップリングの寿命低下
- ロータの不安定化
- 疲労破壊(折損)
特に、「偏心量」「芯出し不良」と組み合わさるとトラブルが急増します。
モーメント荷重の簡易計算例
例:
10N の力が 0.2m の位置で作用
M = 10N × 0.2m = 2 N·m
回転軸の設計では、この値が許容モーメント(メーカー仕様)を超えていないか確認します。
実務でモーメントが発生する典型例
- 片持ち取り付けのプーリ
- 偏心したロータ
- 長尺シャフトの先端負荷
- 芯出し不良による「曲げ+ねじり」複合モーメント
- 荷重が片側に集中したコンベヤローラ
モーメント荷重を抑える設計・運用方法
- プーリ・スプロケットを軸近くに配置
- 支持点(ベアリング)の間隔を広げる
- ベルト張力を適正化
- 芯出しを正確に行う
- アンバランス量の補正(回転バランス取り)
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まとめ
モーメント荷重は、回転軸やシャフトの“曲げ・ねじり”を生む基本要素であり、装置寿命に直結します。
- 曲げ・ねじりモーメントで軸が変形する
- 偏摩耗・振動・破損の原因になる
- ベルト位置・支持点配置・芯出しで改善可能
正しく理解すると、設備の信頼性が大幅に向上します。












