油圧ポンプは、油圧機器の心臓部として油を加圧し、シリンダー・モータ・アクチュエータへエネルギーを送る装置です。
油圧ユニット、建設機械、工作機械、プレス、成形機など、幅広い設備で使用されており、用途に応じてさまざまな種類があります。
この記事では、代表的な「ギアポンプ」「ベーンポンプ」「ピストンポンプ」の違いを、仕組み・用途・メリット/デメリットの観点からわかりやすく解説します。
油圧ポンプとは?
油圧ポンプは、機械的な力を油圧エネルギーへ変換する装置です。
内部に油を吸い込み、圧力を高めて押し出すことで、油圧シリンダーや油圧モータを動かします。
主な役割:
- 油を吸い込み、加圧して押し出す
- 一定の圧力・流量を供給する
- 設備の出力や動作速度を決める中核コンポーネント
油圧ポンプには以下の3種類が代表的です。
ギアポンプ(歯車ポンプ)
ギアポンプは2つの歯車の回転で油を移動させるシンプルなポンプです。
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 構造 | シンプル(歯車2枚) |
| 圧力 | 中圧向け |
| 費用 | 低コスト |
| 耐久性 | 高い、汚れに強い |
| 用途 | 工作機械、油圧ユニット、一般産業機械 |
メリット
- 構造が簡単で安価
- 汚れ・異物に比較的強い
- メンテナンスしやすい
デメリット
- 騒音が大きい
- 流量の脈動が発生しやすい
- 高圧用途には不向き
ベーンポンプ(羽根ポンプ)
ベーンポンプは、ローターの溝に入った羽根(ベーン)が油を運ぶ方式のポンプです。
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 構造 | ローター+可動ベーン |
| 圧力 | 中圧~高圧 |
| 静音性 | ギアポンプより静か |
| 用途 | 成形機、工作機械、一般油圧ユニット |
メリット
- 静音性が高い
- 流量の脈動が少ない
- 省エネ設計に向く
デメリット
- 汚れに弱い(ベーンが摩耗しやすい)
- ベーンの交換などメンテナンスが必要
ピストンポンプ
ピストンポンプは、シリンダー内でピストンが往復することで油を加圧するポンプです。
油圧ポンプの中ではもっとも高性能で、建設機械・高圧設備に広く採用されています。
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 構造 | ピストン+シリンダーブロック |
| 圧力 | 高圧(数十 MPa)に対応 |
| 効率 | 非常に高い |
| 用途 | 建設機械、射出成形機、プレス装置 |
メリット
- 高圧・高効率
- 可変容量タイプで省エネ制御が可能
- 寿命が長い
デメリット
- 価格が高い
- 精密部品が多く、汚れに弱い
- メンテナンス精度が求められる
3種類の比較一覧
| 項目 | ギアポンプ | ベーンポンプ | ピストンポンプ |
|---|---|---|---|
| 構造 | シンプル | ベーンが可動 | ピストン往復 |
| 圧力 | 低〜中圧 | 中圧〜高圧 | 高圧 |
| 静音性 | △ | ○ | ○ |
| 効率 | 中 | 中〜高 | 非常に高い |
| 価格 | 安い | 中程度 | 高い |
| 用途 | 一般機械 | 成形機・工作機械 | 建機・プレス |
用途での選び方
- 安価で汎用 → ギアポンプ
- 静音・中圧 → ベーンポンプ
- 高圧・高効率・可変制御 → ピストンポンプ
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まとめ
油圧ポンプは、油圧システムの性能・静音性・耐久性を決める重要コンポーネントです。
- ギアポンプ:安価・耐久性・汎用性
- ベーンポンプ:静音・中〜高圧・安定した流量
- ピストンポンプ:高圧・高効率・可変容量制御向き
用途・圧力・費用のバランスを考慮して選定することで、設備の長寿命化・省エネ化につながります。












