エンコーダは、モータの回転角度や位置を検出するための重要なセンサです。
特に産業機械やロボットでは、インクリメンタル型とアブソリュート型のどちらを使うかが、制御精度やコストに大きく影響します。
この記事では、両者の仕組みの違い、メリット・デメリット、用途別の選び方を専門知識がない方にも分かりやすく解説します。
インクリメンタル型エンコーダとは?
インクリメンタル型(Incremental Encoder)は、回転量(増分)をパルスとして出力する方式です。
円盤上のスリットをLEDとフォトセンサで読み取り、回転するたびにパルスが発生し、その数で移動量を計算します。
特徴
- パルス数(PPR)で解像度が決まる
- 低コスト・小型・軽量
- 原点復帰(ゼロ点出し)が必要
メリット
- 価格が安い
- 回転速度の検出が得意
- 高速応答が可能
デメリット
- 電源OFFで位置情報が失われる
- 立ち上げ時に原点復帰が必要
- ノイズでパルス抜けが起こる可能性
アブソリュート型エンコーダとは?
アブソリュート型(Absolute Encoder)は、電源OFFでも絶対的な位置を保持できるエンコーダです。
円盤には複数のトラックが刻まれており、それぞれのパターンを読み取ることで「唯一の位置」を判断します。
特徴
- 絶対位置を出力する
- 原点復帰が不要
- 多回転(マルチターン)型も存在
メリット
- 立ち上げ後すぐ位置制御できる
- 安全性が高い(パレット搬送・ロボットなど)
- 誤差累積がない
デメリット
- 高価
- 構造が複雑で重い
- 通信方式が必要(SSI、BiSS、EnDatなど)
インクリメンタル型とアブソリュート型の違い(一覧)
| 項目 | インクリメンタル型 | アブソリュート型 |
|---|---|---|
| 位置情報 | 相対位置(パルス) | 絶対位置 |
| 電源OFF時 | 位置喪失 | 保持 |
| 原点復帰 | 必要 | 不要 |
| コスト | 低い | 高い |
| 応答性 | 高速 | 通信の影響あり |
| 用途例 | ファン・ポンプ・回転速度検出 | ロボット・位置決め・搬送 |
用途別の選び方
インクリメンタル型が向いているケース
- 低コストで十分な装置
- 速度検出がメインの用途
- 立ち上げ時の原点復帰が許容される機械
アブソリュート型が向いているケース
- 電源復帰後すぐ動作する必要がある装置
- ロボット・位置決め装置など高精度用途
- 安全性が重要なアプリケーション
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まとめ
インクリメンタル型とアブソリュート型エンコーダは、役割と特徴が大きく異なります。
- インクリメンタル:安価・高速・原点復帰が必要
- アブソリュート:位置保持可能・高精度・高価
- 用途により正しく使い分けることが重要
エンコーダを正しく選定することで、機械の性能と安全性が大きく向上します。












