真空度(Vacuum level)は、気圧がどれだけ低い状態かを表す指標で、半導体製造・真空ポンプ・分析装置・成膜装置・食品包装などで必須の概念です。
真空の分野では、Pa(パスカル)・Torr(トル)・mbar(ミリバール)の3つがよく使われますが、分野ごとに表記が異なるため混乱しがちです。
この記事では、これらの単位の違いと換算、真空度の区分、現場での使い分けをわかりやすく解説します。
真空度とは?
真空度とは、容器内や装置内がどれだけ低圧になっているかを示す指標です。
大気圧より低い状態 → 真空
気圧が低いほど「高真空」と呼ばれます。
真空度の3つの代表的単位
| 単位 | 読み方 | 特徴 |
|---|---|---|
| Pa | パスカル | 国際単位系(SI)。日本国内では最も標準 |
| Torr | トル | 真空技術の伝統単位。半導体・分析で多い |
| mbar | ミリバール | ヨーロッパで一般的。真空ポンプ性能表で多用 |
Pa・Torr・mbar の換算表
| 真空度 | Pa | Torr | mbar |
|---|---|---|---|
| 大気圧 | 101325 | 760 | 1013 |
| 粗真空 | 10⁵〜10³ | 760〜7.5 | 1013〜10 |
| 中真空 | 10³〜1 | 7.5〜0.0075 | 10〜0.01 |
| 高真空 | 1〜10⁻⁵ | 0.0075〜10⁻⁷ | 0.01〜10⁻⁷ |
| 超高真空 | 10⁻⁵以下 | 10⁻⁷以下 | 10⁻⁷以下 |
Pa:SI単位系で国際標準
Pa(パスカル)は圧力の国際単位で、真空分野でも公式基準。
例:
- 真空ゲージの標準表記
- 日本工業規格(JIS)の計測単位
Torr:真空の伝統単位
Torr(トル)は、水銀柱760 mm を1気圧とした歴史的な単位。
- 1 Torr = 133.322 Pa
半導体製造・質量分析・成膜装置など、伝統的にTorrが多用される分野で今も現役です。
mbar:ヨーロッパで一般的
mbar(ミリバール)は、バール(bar)を1000分の1にした単位。
ポンプメーカー・欧州機器では現在も多用されます。
真空度の区分(粗真空〜超高真空)
① 粗真空(10⁵〜10³ Pa)
- 真空ポンプの初期排気
- 脱気、乾燥
② 中真空(10³〜1 Pa)
- 真空炉
- 真空成形
③ 高真空(1〜10⁻⁵ Pa)
- 成膜装置
- 電子顕微鏡
④ 超高真空(10⁻⁵ Pa以下)
- 半導体製造
- 表面分析装置
Pa・Torr・mbar の使い分け
- 国内装置・JIS表記 → Pa
- 半導体・分析装置 → Torr(慣例が強い)
- ヨーロッパ製ポンプ → mbar表記が多い
どの単位も圧力を示しており、単位換算さえ理解していれば問題ありません。
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まとめ
Pa・Torr・mbar は、真空度を表す単位で分野ごとに使い分けられています。
- Pa: 国際標準(JIS)
- Torr: 真空技術の伝統単位
- mbar: 欧州で一般的
- 換算:1 Torr = 133.322 Pa = 1.333 mbar
真空技術を扱う上で、単位換算の理解は欠かせません。












