エアシリンダ(Air cylinder)は、圧縮空気の力でピストンを直線運動させる空圧アクチュエータです。
コンパクト・低コスト・高速応答という特徴から、FA装置・自動機・搬送装置・治具など幅広い用途で使用されています。
この記事では、エアシリンダの仕組み、構造、ストローク計算、選定、装置での使い方について解説します。
エアシリンダとは?
エアシリンダは、圧縮空気を利用してピストンを往復運動させるアクチュエータです。
電動シリンダや油圧シリンダに比べ、構造がシンプルで軽量、コストが低い点が特徴です。
主な用途:
- 押し出し・押し込み動作
- 昇降・直動搬送
- ワーク位置決め
- クランプ動作
- 開閉機構
エアシリンダの構造
基本構成は以下の通りです。
- シリンダチューブ:空気室となる円筒
- ピストン:空気圧力を受けて動く部品
- ピストンロッド:外部に力を伝達
- エンドカバー:前後の密封部
- パッキン:気密保持
エアシリンダの種類
① 単動シリンダ
片側のみ空気圧で動作し、戻りはスプリング。
軽負荷向け。
② 複動シリンダ
前後両方向を空気圧で動かすタイプ。
最も一般的。
③ ガイド付きシリンダ
横荷重に強く、位置決め精度が高い。
④ スイングシリンダ(回転)
回転方向の運動を実現。
⑤ ロッドレスシリンダ
省スペースで長ストロークに対応。
エアシリンダの力(推力)計算
エアシリンダの推力 F は以下で求められます。
F = P × A
P:空気圧(MPa)
A:ピストン面積(mm²)
例:
内径 32mm の複動シリンダ
圧力 0.5MPa の場合
A = π × (16²) = 約804mm²
F = 0.5MPa × 804 = 約402N(約40kgf)
※戻り側はロッド径分、面積が小さくなる点に注意。
ストローク選定のポイント
- 必要移動量+安全余裕
- 高速動作の停止距離
- ガタやしなりの余裕
- ショックアブソーバ併用の有無
エアシリンダの使い方(装置設計での注意点)
- 横荷重に弱いためガイド併用が基本
- 速度調整はスピードコントローラで行う
- 高速停止にはショックアブソーバを使用
- クランプ用途では複動タイプが安全
- 配管は細すぎると動作が遅くなる
よくあるトラブル
- 動きが遅い → 配管抵抗・圧力不足
- 前進しない → 電磁弁・配管接続ミス
- エア漏れ → パッキン摩耗・継手緩み
- ガタ発生 → 横荷重過大・ガイド不足
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まとめ
エアシリンダは、軽量・低コスト・高速応答というメリットを持つ代表的な空圧アクチュエータです。
- 複動シリンダが最も一般的
- 推力は「圧力×面積」で計算できる
- ガイド併用で寿命が伸びる
- 選定は荷重・速度・ストロークが重要
適切な選定と使用方法を理解すると、装置の安定性が大きく向上します。












