ベアリングの予圧(Preload)とは、ベアリングにあらかじめ一定の圧力(負荷)を与えて内部すきまをゼロまたは負の状態にすることです。
特に、アンギュラ玉軸受・精密主軸などで重要な要素となり、剛性・振動・回転精度に直結します。
この記事では、予圧の必要性、メリット・デメリット、実際の方法までを初心者にも分かりやすく解説します。
ベアリングの予圧とは?
予圧とは、ベアリングに「隙間がない状態」を作るために、あらかじめ軸方向に力を加えておくことです。
通常のベアリングには微小な内部すきまがありますが、これが振動・ガタ・剛性不足につながるため、高精度用途では内部すきまをゼロ〜負の方向へ調整します。
予圧を使うベアリングの代表例
- アンギュラ玉軸受(主軸・送り軸)
- 円すいころ軸受
- 高精度モータの前後軸受
深溝玉軸受では用途により行う場合があります。
ベアリングに予圧をかける目的
① ガタ・遊び(バックラッシ)を防止
内部すきまがゼロになることで、軸のガタを抑える。
② 軸受剛性の向上
工作機械主軸やロボット関節などで重要。
③ 回転精度の向上
軸方向のブレが小さくなり、加工精度・測定精度が向上。
④ 振動・騒音の低減
内部クリアランスが減ることで振動が安定する。
予圧のデメリット(注意点)
メリットばかりに見えますが、条件によっては大きなデメリットを生みます。
- 発熱が増える(最も重要)
- 摩耗が早くなる
- トルク増加(モータ消費電力増)
- 寿命低下のリスク
予圧のかけすぎは「焼付き」と「早期破損」の代表的要因です。
予圧の種類
① 定圧予圧(Constant pressure preload)
スプリングや皿ばねで一定の力を与える方式。
メリット:
- 温度変化や組付け誤差に強い
- 負荷変動が少ない
② 固定予圧(Fixed preload)
スペーサ・シム調整によって機械的に固定する方式。
メリット:
- 高剛性・高精度
デメリット:
- 温度変化に弱い
- 組付け精度がシビア
③ ペアベアリングによる予圧
アンギュラ玉軸受を DT(背面組)、DF(正面組)、DB(対面組)で組み合わせることで内部に適正な予圧を設定する方法。
予圧のかけ方(実務でよく使う方法)
① スペーサ調整方式
ベアリング間のスペーサを研削して、内部すきまをゼロ〜負にする。
② シム調整方式
シムプレート(0.01〜0.1mm単位)で微調整。
③ ナット締付けによる方法
円すいころ軸受の予圧でよく使われる手法。
④ スプリング予圧
皿ばねやコイルばねを使って定圧を維持。
⑤ メーカー設定済みペアベアリングを使用
最も確実で高精度、主軸用途で定番。
予圧を判断するポイント
- 軸受の許容回転数
- 軸受の剛性要求(加工精度)
- 作動温度
- 使用グリース・オイル
- 軸受の組付け精度(芯出し必須)
予圧が高すぎると、ほぼ確実にベアリング寿命が短くなります。
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まとめ
ベアリングの予圧は、剛性・回転精度・騒音・振動に大きく影響する重要な要素です。
- 予圧=内部すきまをゼロ〜負に調整すること
- ガタ防止・剛性向上・精度向上に有効
- かけすぎは発熱・寿命低下の原因
- スペーサ・シム・ばねなど複数の方法がある
適切な予圧管理により、回転機構の性能を最大限に引き出すことができます。












