摩擦係数とは、2つの物体が擦れ合うときの「滑りやすさ(または滑りにくさ)」を表す数値です。
摩擦力の大小を示す基本パラメータで、機械設計・摺動部品・潤滑・材料選定など、多くの工業分野で重要な役割を持ちます。
この記事では、摩擦係数の基礎、計算式、材質別の比較、実際の設計での使い方まで初心者にもわかりやすく解説します。
摩擦係数とは?
摩擦係数(Coefficient of Friction:μ)とは、接触している2つの面に働く摩擦力の大きさを示す無次元の数値です。
摩擦力の基本式
摩擦力 F = μ × N
N:垂直抗力(押し付ける力)
μ:摩擦係数(0.05〜1.0程度)
数値が大きいほど「滑りにくい」
数値が小さいほど「滑りやすい」と言えます。
静摩擦と動摩擦
- 静摩擦係数:動き出すまでの摩擦力(大きい)
- 動摩擦係数:動いているときの摩擦力(小さい)
設計では静摩擦を重視する場面が多いです。
材質別の摩擦係数の比較
一般的な値の目安をまとめます(乾燥条件)。
| 材質組み合わせ | 摩擦係数(静摩擦) | 特徴 |
|---|---|---|
| 鋼 × 鋼 | 0.5〜0.8 | 滑りにくい、焼付きやすい |
| 鋼 × アルミ | 0.4〜0.6 | 摩耗しやすい |
| 鋼 × ブロンズ | 0.15〜0.25 | すべり軸受に使われる |
| 樹脂(POM、MCナイロン) × 鋼 | 0.15〜0.3 | 摺動部で多用 |
| PTFE(テフロン) × 鋼 | 0.04〜0.1 | 非常に滑りやすい |
| ゴム × 鋼 | 0.6〜1.0 | 非常に高い摩擦力 |
※潤滑条件では値が大きく変化します。
摩擦係数を下げたい場合
- 潤滑油・グリースを使用する
- PTFE・UHMWなど低摩擦材を使う
- 表面を鏡面加工にする
- 転がり軸受(ベアリング)に変更する
摩擦低減は、エネルギー損失の削減(省エネ)にもつながります。
摩擦係数を上げたい場合
- ゴム材を使用する
- 表面粗さをあえて粗くする
- 圧力を増やして密着を強める
搬送ローラ・制動装置・クランプなどに利用。
摩擦係数が重要になる場面
- 摺動部(ガイド、リニアブッシュ)
- ベルト伝動(プーリ × ベルト)
- 軸受設計
- ブレーキ・クラッチ
- 摩耗・発熱計算
- 摩擦攪拌などの加工工程
特に摩擦・摩耗・潤滑の3要素は切り離せません。
摩擦係数の測定方法
- 傾斜法:物体が滑り出す角度からμを求める
- 引張試験法:荷重計を使って摩擦力を測定
- 往復摺動試験:実機条件に近い評価が可能
測定環境により値が大きく変わるため、条件設定が重要です。
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まとめ
摩擦係数は、摺動部や材料の選定において欠かせない重要パラメータです。
- 摩擦係数(μ)は物体の滑りやすさを表す値
- 材質・表面粗さ・潤滑条件で大きく変化
- 摺動部の設計では「摩耗」「発熱」とセットで考える
- 摩擦低減は省エネ・寿命向上に直結
正しく理解することで、装置の性能向上・トラブル低減が可能になります。












