クリープ摩耗(Creep Wear)とは、「部品同士が強く押し付けられた状態で、ごく微小なすべりが繰り返されることで発生する摩耗」のことです。
外観上は動いていないように見えても、荷重や振動によって微小な相対運動が起きている場合に発生します。
ギア、シャフト、ベアリング、摺動面、ボルト締結部など、多くの産業機械で見られる代表的な摩耗現象です。
この記事では、クリープ摩耗の仕組み、発生原因、代表例、予防策をわかりやすく解説します。
クリープ摩耗とは?
クリープ摩耗(Creep Wear)とは、
接触面に強い荷重がかかった状態で微小なすべりが繰り返され、表面が少しずつ削られる摩耗現象
のことです。
外観上はすべり運動が見られなくても、温度変化・振動・負荷変動などによって極めて小さな相対変位が発生し、その積み重ねで摩耗が進行します。
クリープ摩耗の特徴
- 接触圧が高い部位で起きやすい
- すべり距離は非常に小さい(ミクロンオーダー)
- 摩耗粉は細かく酸化しやすい
- 見逃されやすく、進行すると急激に悪化
よく似た現象との違い
フレッティング摩耗との違い
フレッティングは「振動による微小すべり」が主原因。
クリープ摩耗は「押し付け荷重が強い状態での微小すべり」。
滑り摩耗との違い
滑り摩耗は明確なすべり運動がある。
クリープ摩耗は目に見えない微小すべり。
クリープ摩耗が発生する原因
① 高い接触面圧
荷重が大きいほど微小すべりによる表面破壊が進む。
② 繰り返し荷重
温度膨張・負荷変動で相対変位が生じる。
③ 振動
静止して見える部品でも振動で微小すべりが発生する。
④ 潤滑不足
油膜形成が不十分だと表面が直接接触し摩耗促進。
⑤ 材料組み合わせの不適合
硬度差が小さい場合に摩耗粉が発生しやすい。
クリープ摩耗の発生例
ギアの歯面
負荷変動や揺動で表面が微小にすべる。
シャフトと軸受の接触面
予圧不足や振動で微妙な相対変位が生じる。
リニアガイドの接触部
負荷偏りにより微小変位が発生。
ボルト締結部
締付け後の微小な動きにより摩耗粉が発生。
クリープ摩耗を防ぐ方法
① 適切な潤滑を行う
油膜が形成されると摩耗が激減。
② 面圧を下げる(面積を増やす)
ワッシャ追加・形状変更で面圧を低減。
③ 材料変更(硬度差をつける)
耐摩耗材料の採用が有効。
④ 予圧(プリロード)の適正化
ガタを抑えて相対変位を減らす。
⑤ 振動低減(剛性向上)
スティッフネス不足は微小変位を生むため重要。
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まとめ
クリープ摩耗は、押し付け荷重が高い状態で微小なすべりが繰り返されることで発生する摩耗現象です。
- 高面圧+微小すべりで発生
- 見た目に動きがなくても摩耗は進む
- 振動・荷重変動がある部位で起きやすい
- 潤滑・材料変更・面圧低減が有効な対策
部品寿命や信頼性を大きく左右するため、摺動部の設計・保全では必ず理解しておきたい現象です。












