インバータ(インバータ制御装置)は、モーターを回転数可変で制御するための電力変換装置です。
工場のファン・ポンプ・コンプレッサ・搬送装置など、回転機械の省エネ・長寿命化・高精度制御に欠かせない機器です。
この記事では、インバータの用途、仕組み、PWM制御の基礎、モーター制御との関係をわかりやすく解説します。
インバータとは?
インバータは、入力された電源(AC)を一度直流(DC)に変換し、その後PWM制御で再びACへ変換することで、モーターの回転数を自由に制御できる装置です。
用途:
- ファン・ポンプの省エネ運転
- コンベア・搬送ラインの速度制御
- コンプレッサ・冷却装置の流量制御
- モーターのソフトスタート・ソフトストップ
インバータ制御の基本構造
インバータは主に3つのブロックで構成されます。
① 整流回路(AC → DC)
入力した商用電源(200V/400Vなど)をダイオードやサイリスタで直流に変換。
② 平滑回路(コンデンサ)
脈動するDCをコンデンサで安定した直流に整える部分。
③ インバータ回路(DC → AC)
IGBT(パワートランジスタ)を高速スイッチングし、PWM波形として任意の周波数・電圧のACを生成。
モーターはこのAC電圧で回転数が決まります。
PWM制御とは?
PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)は、IGBTを高速でON/OFFすることで実効電圧をコントロールする技術です。
- オン時間が長い → 実効電圧が高くなる → モーター回転数が上がる
- オフ時間が長い → 実効電圧が下がる → 回転数が下がる
PWMにより、
- 安定した低速運転
- 高効率な速度制御
- 急激な過電流を防ぐ保護機能
が可能になります。
インバータを使うメリット
- 省エネ効果が大きい(特にファン・ポンプ)
- 軟起動で機械寿命が延びる
- 流量・速度の安定制御
- 電流制限によるモーター保護
- 装置の騒音低減
ファン/ポンプは回転数の3乗に比例して消費電力が変化するため、インバータ導入が最も効果的な省エネ施策の1つです。
インバータの主な制御方式
① V/f制御
最も一般的な制御方式。電圧(V)と周波数(f)の比率を一定に保つ。
メリット:
- 安価で扱いやすい
- ファン・ポンプ・一般搬送に最適
② センサレスベクトル制御
モーターの磁束と電流を演算し、高精度なトルク制御を行う方式。
メリット:
- 低速域でも高トルク
- 負荷変動に強い
③ PG(パルスジェネレータ)付きベクトル制御
エンコーダからの回転情報を使い、さらに精密な速度・位置制御が可能。
用途:
- 巻取り装置
- 高精度搬送システム
- 張力制御・同期制御
インバータ選定のポイント
- モーター容量: kWに合わせて容量を選定
- 制御方式: V/f・ベクトルのどちらが必要か
- 入力電源: 単相200V/三相200V/三相400V
- 保護機能: 過電流・過電圧・欠相など
- 環境条件: 周囲温度・粉塵・湿気
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まとめ
インバータは、モーターを「最適な回転数」で運転するための電力変換装置です。
- AC→DC→AC の変換と PWM でモーター回転数を制御する
- ファン・ポンプでは省エネ効果が非常に大きい
- 用途に応じて V/f制御・ベクトル制御を選択する
インバータを適切に使うことで生産ラインの効率化・省エネ・装置寿命の向上が実現できます。












